アルコル第2号 2001年1月30日

先号のアルコルでは、登谷さんに留学生問題のいわば「全国情勢」について紹介いただきましたが、今回は京大とその周辺の留学生の問題に寄せて、 「吉田日本語学習友の会」の設立当初から関わってこられた澤居さんに寄稿いただくことができました。


留学生問題をめぐって

澤居 紀充

☆『吉田日本語学習友の会』草創期のころの想い

今から7、8年前に新潟大学で開かれた全大教の教研集会に参加し、留学生問題でレポートしたことがありました。 経済学部の佐藤進先生も分科会に出席され、積極的にコメントされました。

この時のレポートの標題は「増える留学生-教職員組合の役割~『吉田日本語学習友の会』の経験から~」というもので、 1992年3月に留学生2人と日本人スタッフ5人で始めた「吉田日本語学習友の会」が、一年余の間に急成長し、留学生42人、日本人スタッフ32人、合わせて74人となっていることを紹介し、 背景と発端、発足総会、現在の活動、課題などについて報告、最後に「留学生問題-組合は何ができるか」として、以下のような問題提起をしました。

1.教研活動の重要なテーマの一つとして、留学生問題や国際交流のありかたについて現状と問題点を総ざらいし、必要な改善要求を整理して、その実現を留学生や教職員とともにはかる。

2.定期的な学習会(主として外国語、留学生の母語)を組織し、大学教職員や地域住民の外国語学習に対する要求に応えるとともに、留学生の生活維持の一助とする。

3.大学教職員、同退職者、地域住民の国際交流についての熱意を生かし、留学生とその家族の日本語学習を援助する。広範囲で、しかも高度な水準をめざして。

4.将来の展望として、留学生OBの国別ネットワークをつくり、教職員の在外研究(研修旅行)や学術資料の収集などへの助力を得る。

☆『ことばのネットワーク』構想

その後、ますます強まる留学生の要求に応えるためには、態勢の整わないボランティア組織では不十分ではないかと感じ、 佐藤先生とともに京都の大学生協連に「ことばのネットワーク」構想を提案しました。

これは大学教職組への提起と同様、留学生の生活問題の解決と大学教職員等の要求の結合をはかる主旨のものでした。

☆京大生協留学生委員会の発足と活動

1996年に京大生協留学生委員会が設立されました。 佐藤進先生と生協の平信行常務、留学生の努力で実現を見、以後活発な活動を展開し、わたしの「教研レポート」や「ことばのネットワーク」提案とは直接の関係はありませんが、 提案のいくつかと重なる内容がすでに実現されてきています。

主な活動は、新入留学生歓迎行事、中国語・ハングル・英会話教室、『らいふすてーじ』誌の留学生TIMES欄の編集、旅行、スポーツ大会、大学生活ガイドブックやホームページでの情報提供、 11月祭参加、クリスマス・ダンスパーティー、住宅問題、カリキュラム問題、生協食堂メニューの英語表示、トルコと台湾大地震救援カンパ・・・と、多彩です。

また、「吉田日本語学習友の会」との共催で「世界からの手紙」シリーズにとりくみ、すでに24回を数えています。

☆大学から市民へ

以上の経過をふまえ、わたしは留学生とかかわる活動の全市的な展開のために、 現在設立準備が進められている「高齢者協同組合・くらしコープ」の本格的事業のひとつとして、 「留学生講師による語学研修・ガイドつき海外旅行」や「海外学術研究・調査活動の援助」その他を提案しています。

☆世界を見る窓 ――― 留学生問題

職員組合のほうは、残念ながら、教研レポート以後の展開は皆無です。 大学の全構成員との共同をもっと積極的にすすめてもらいたいものです。

また地域社会との関係を研究し、職員組合として地域の人々や諸団体と協力し、地域のなかでシンポジウムやワークショップなどを積極的に展開することは、時代の要請に応えることになると思います。

まず留学生問題を手始めに、国際連帯や日本の外交問題、世界の平和秩序形成の問題にも発展させていってほしいものです。


アルコル表紙に帰る