アルコル第6号 2001年6月11日

現在、京都御苑に『国立京都迎賓館』の本格的な建設が進もうとしています。 この迎賓館建設に対し、息長く反対運動を続けてきておられる「連絡会」 の竹本さんから寄稿いただきました。


ムダと環境破壊の無法な迎賓館計画

京都御苑への『迎賓館』建設に反対する連絡会 竹本文夫

法律破りの無法な建設計画

今迄自由に入れた京都御苑に市民が入ることもできない迎賓館がつくられようとしています。 京都御苑は、戦後皇室財産から国民の共有財産になった国民公園です。 いわば太平洋戦争の血の犠牲によって私たち国民のものとなった貴重な国立公園と言っていいでしょう。 たとえ一角とはいえそれを再び取り上げるなどとんでもない歴史の逆行です。

1949年制定の国民公園運営原則は、「各苑地の特性に照らし之と関連のない施設はこれを設けないこと。特に営利を主目的とし、又は権利を伴う諸施設の設置は、これを認めないこと」 「国民庭園として公開すること」などを定めています。 また京都府も御苑の緑地を永久保存するため御苑を緑地公園として都市計画決定しました。

建設計画は、迎賓館という一施設のために、戦後一貫して守ってきたこの方針を突然投げ捨て、無理無体に法律を変更してまで迎賓館を御苑の中に造ろうとするものです。 法律を順守すべき政府や自治体が決してしてはならないことです。

豊かな自然に恵まれた京都御苑

京都御苑は二十四時間いつでも誰でも自由に入れる市民憩いの場。 都心部にあって里山並みのきれいな空気、五万本もの立木、町中では殆ど駆逐されてしまった関西タンポポ、 森の妖精といわれ絶滅が心配されるタシロランの群生、オオタカの飛来と採餌活動、白雲神社の名水など京都御苑の自然は実に豊かです。 昨年には新種の植物「カワセミソウ」が発見されました。

京都御苑は、大都市の都心部にある公園としては世界で有数の自然の豊かな公園です。 この自然を迎賓館の建設は破壊します。御苑のすぐそばの梨木神社の名水も心配です。

ALCOR06_A 「完成予想図」には、周りに豊かな緑が書き込まれているのだが・・・

御苑は文化遺産の宝庫

御苑の中にある京都御所、仙洞御所、大宮御所は、世界遺産に登録されて当然の文化遺産です。 宮内庁の同意が得られず断念されましたが、ユネスコでは御所離宮が推薦されないことが問題になったといいます。

文化遺産は御所にとどまりません。 御苑内唯一現存の公家屋敷・旧閑院宮邸、九条家の庭や池や茶室・拾翠亭、御苑の四周にある九門などたくさんあります。

地下にも貴重な歴史遺産があります。御苑には平屋の建物しか建てられていなかったため、各時代の遺跡が破壊されずに残っているきわめてまれなところです。 現に建設予定地から江戸時代の屋敷を含む公家町の遺構が良好な状態で出土しました。 考古学者から京都や日本にとってだけでなく東アジアの物流史上貴重な遺跡だとの声が出ています。

こんな重要な歴史的地域に不要不急の迎賓館を造ることは、本物の歴史的建築物や文化財に対する冒涜です。 貴重な公家町の遺構その他埋蔵文化財も破壊されます。 しかも、歴史的建物・大宮御所は国賓の迎賓施設にあてられています。 この大宮御所もここ数年国賓の利用はありません。そのすぐ近くにどうしてもう一つ造る必要があるでしょうか。

都市施設と迎賓館は両立できない

以上のように京都御苑は、自然と文化遺産の宝庫、市民憩いの場、日本が世界に誇る国民公園です。 建築基準法、都市公園法、国民公園運営原則など法律によって幾重にも建築規制がされているのは当然です。 それを乱暴に踏みにじって造ろうとするのが京都迎賓館計画です。

無理な計画のため様々な矛盾が起こっています。 その最たるものが都市施設指定です。 都市施設とは、市民の都市生活に役立つ、市民に開かれた施設です。 しかし迎賓館は、外国の三権の長をもてなす宿泊施設であり、その安全を守るため厳重な警備をし、市民を完全に排除します。 迎賓館と都市施設は相反する性格の施設で両立できません。

もし市民に開かれた都市施設なら、単なる国際交流施設であり、迎賓館という名前は国民をだます詐欺です。 外国からも迎賓館とは見なされないでしょう。 もし名実ともに迎賓館なら、市民を徹底的に排除する施設であり、都市施設ではありえません。 ましてや迎賓館が、都市施設の中でも学校や図書館と同じグループの教育文化施設だというのですからあきれてものが言えません。

ニセ迎賓館

国公賓の京都での宿泊が一年に一度あるかないかという状況を考えると、迎賓館ではなく、関西の自治体のための単なる国際交流会館にならざるをえないでしょう。 それならなおさら国民公園・京都御苑の中に造るなど許されません。

広がる迎賓館反対の声

はじめ建設賛成だった人も以上のような実態と矛盾が明らかになるにつれ反対になってきており、マスコミ関係者も「京都市民の多数は反対」という状況になっています。 京都財界の有力幹部の中にも凍結を言う人が出はじめています。 政界でも、共産党以外はすべて建設推進でしたが、五月末の参議院では社民党は全員反対、二院クラブは大多数、無所属議員の一部も反対に回りました。 「ムダと環境破壊の公共事業やめよ」の全国的世論の高まりと「迎賓館はいらない」の声が一緒になって、まだ一部とはいえ、政界を動かし始めました。 今後一層反対の声が大きくなれば建設阻止は可能です。


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