5月29日、行政改革推進事務局は「新たな人事制度について(検討案)」を、関係各方面に示しました。その内容は、政変(森→小泉)や人事院サイドなどからの抵抗を反映してか、3月27日に示された「公務員制度改革の大枠」を、かなりマイルドにしたものになっているようです。そのため、先には「労働基本権の制約の在り方との関係も十分検討する」としていた“棚ボタ”のスト権はかなり遠のき、労働基本権についての記述はなくなりました。その一方、「能力等級制度」についてかなり具体的な姿が示され、人事院の側が2月に示した「俸給体系の基本的見直しについて」ともすり合わせ可能な提案が含まれています。ともかく今月中に、「新たな公務員制度の基本設計」が取りまとめられることになっているわけで、この「検討案」には十分注意が払われる必要があります。今回の行革推進事務局の「検討案」について、かいつまんで紹介します。
今回の「新たな人事制度について(検討案)」(以下「検討案」)では、「公務員制度改革の大枠」(以下「大枠」)に掲げられた、高邁な意気込みは影を潜めたように見えます。先には「責任ある人事管理」が前面に出ていました。そして各府省の大臣が「人事管理権者」となり、それと対等に渉り合う労働者として公務員が登場。そこから人事院が背景に退き、スト権など労働基本権の回復が自ずと検討課題に上ってきたわけです。全大教も、この労働基本権回復を最重点に、現在、署名活動を行っています。
それが「検討案」では「適正な人事マネジメント」が重みを増しました。「適正な人事マネジメント」の下で、「各府省が自らの判断と責任によって人事管理を行える」形になったわけです。したがって、給与などでも「テーブルは各府省共通」といった部分が導入されました。「大枠」は、「人事院について、・・・組織としての在り方も含め、今後求められる役割について検討を行う」と、いわば人事院への宣戦布告を行いました。これが「検討案」では、人事院についての言及は見当たらず、「(給与の表などは)各府省共通とし、法律等で定める」といった表現が散りばめられています。“落としどころ”として、「法律等」のところに人事院を嵌めようということでしょうか?この結果、スト権も遠のいてしまったわけです。
このことに怒るかどうか?ここは、われわれの「公務員の労働基本権回復」という「大義」に対する姿勢が問われるところのように思われます。
「大枠」では、「新たな政府の組織で働くのは新たな公務員でなければならない」という形で従来のありようからの「断絶」が色濃く出ていたのが、「検討案」はより現在のシステムとの接続を重視し、実務的に詰めた形で新しい制度が示されています。特にもっとも職員の関心の高いであろう、給与について、紹介しておきましょう。
給与の基本的な組み立ては、「大枠」と同じで
給与 = [能力給]+[職責給] + [業績給]
という形です。一般職の場合、「能力給」がいわば基本給となり、そこに「職責給」が加算される形です。「大枠」では、この「業績給」をかなり強く押し出した記述でしたが、「検討案」では、「業績給」は現在の「勤勉手当」の位置付けになるようです(なお指定職は年俸制で、業績給の比重が大きい想定になっている)。
問題はこの「能力給」の内実ですが、「検討案」では「大枠」同様、新たに「能力等級」を導入してこれを定めることになっています。そして今より「大括り」にするようで、以下の8段階にする案が例示されています。
この「能力給」、掛け声は勇ましいようですが、かなり現在の「等級号俸制」(職責=等級と経験年数=号俸)を反映したものと見てよいようです。
能力給 = [定額部分] + [加算部分]
で、加算部分は年次ごとの「評価」に応じて加算されていく仕掛け。これだけ取り出すと、今の「等級」が「定額部分」、「号俸」が「加算部分」とみてよいようです。
違うところは、「等級」が直ちに「役職」と結びつかないこと。上の表にもあるように、同じ「役職」に対しちがう「能力等級」が割り振られたりもしています。これだけとれば、「大枠」の時に言われた、「役職が下でも給料は上」といったことがどんどん起きそうです。この点「検討案」では「現実の行政組織においては職員の能力が役職段階(課長、課長補佐、係長等)に応じて認識されていることから」、能力等級のアップと役職のアップは連動する仕掛けになっています(役職がアップして能力等級が変わらないことはアリ)。