一般に物理量は数値と単位の掛け算で表現される。
(物理量) = (数値)×(単位)
(数値) = (物理量) /(単位)
掛け算であることを明示するため、数値と単位の間にはスペースを入れるのが標準。 物理量を表す記号は通常イタリック体(斜体)を用いる。
物理量と数値の取り違えが、致命的な問題を引き起こす場合がある。 この3種の記法で(c)は好ましくない。 なお筆記の際には立体とイタリック体の区別は難しいので、文脈によって読み替えることが一般。 グラフなどを作成する際、グラフでは「数値」が表現されていると見なせる。 \(s = 12 \rm{kg}\) という物理量をグラフ上の \(r = 12 \rm{cm}\) の位置にプロットするのは、 数値 \(s / \rm{kg}\) を、数値 \(r / \rm{cm}\) に対応付けていることに相当する。 グラフの縦軸・横軸の説明(キャプション)は、物理量/単位の形で表記するのが望ましい。
数値の計算と単位の計算を分けて記述するようにしよう。
答:モル質量を \(M\) とすると理想気体の状態方程式から \(PV = (w/M)RT\) が成立する。 したがって \(M = (RT/V)(w/P)\) である。\(w / \rm{g}\) \(= 0.00768~ P / \rm{kPa}\)なので
\(M = [8.314~ \rm{J~ K^{-1}~ mol^{-1}} (273.15 + 24)~ \rm{K} / (0.60~ \rm{L})] \times 0.00768~ \rm{g/kPa} \\ = 31.6 ~\rm{[J~ K^{-1}~ mol^{-1} K~ g/(L~ kPa)]}\\ =31.6~ \rm{[J~ mol^{-1}~ g/(0.001 ~m^3 1000~ Pa)]} = 31.6~ \rm{g/mol} \)
原子質量単位は1 g/molなので、分子量は31.6。
化学実験の現場では、注目する反応に関与する特定の分子種(酸塩基反応であれば水素イオン、酸化還元反応であれば電子)を想定し、 濃度を記述することが行われることがある。 酸塩基について使われる規定度(記号N)は溶液 1 L が授受する水素イオンの物質量に相当する。 たとえば 1 mol/L 硫酸は 2 N 硫酸に相当する。 濃硫酸(96 mass%)は 36 N(18 mol/L)、 濃塩酸(37 mass%)は 12 N(12 mol/L)、 濃アンモニア水(28 mass%)は 15 N(15 mol/L)に相当することは記憶しておいてよい。