2020.3
吉村洋介
入門化学実験

参考2. いくつかの抽象的・定性的な表現について

実験条件・操作等を記述する際、「常温」や「1滴」といった表現を用いるが、 それが実際に何°C、何mL なのかは必ずしも明白でない。 こうした抽象的・定性的な表現の“通念”について主に日本薬局方に従ってまとめておく。 なおこれらはあくまで“通念”であって、とり扱う対象、分野あるいは個人によってかなり幅があると心得るべきである。

【約】
定量に供する試料の採取において、記載された量の±10%の範囲をいう。
【直ちに】
前の操作の30秒以内に次の操作に移ること。
【滴】
0.05 mL程度。滴数を測るには、20 °Cで水 20滴を滴下するときその質量が 0.90~1.10 g となるような器具を用いる。
【溶液】
単に溶液と記載し特に溶媒名を示さないものは水溶液。
<温度に関わって>
【常温】
15~25 °C
【室温】
1~30 °C
【微温】
30~40 °C
【冷水】
10 °C以下
【温水(温湯)】
60~70 °C
【熱湯】
約100 °Cの水
【冷所】
1~15 °Cの場所
【水浴上(水浴中)加熱】
特に指定がなければ、沸騰している水浴を用いて加熱
【加熱した溶媒(溶液)】
ほぼ沸点付近の温度まで熱したもの。
【加温した溶媒(溶液)】
60~70 °Cに熱したもの。
<秤量>
【精密にはかる】
0.1 mgまではかること。
【正確にはかる】
指示された数値の質量をそのケタ数まではかること。
<溶解度>

溶解性を示す用語は、溶質 1 g あるいは1 mLを溶かすのに必要な溶媒の量(20± 5 °Cで振り交ぜたとき 30分以内に溶ける度合い)を x とする時、次の例による:
表現対応する溶解度
極めて溶けやすいx < 1 mL
溶けやすい1 mL ≤ x < 10 mL
やや溶けやすい10 mL ≤ x < 30 mL
やや溶けにくい30 mL ≤ x < 100 mL
溶けにくい100 mL ≤ x < 1000 mL
極めて溶けにくい1000 mL ≤ x < 10000 mL
ほとんど溶けない10000 mL ≤ x


目次のページへ