2020.3
吉村洋介
入門化学実験

参考5. マイクロスコープ

各机に1台 Depstech/Teslong のマイクロスコープが配置してある。およそ20倍程度の倍率が容易に得られ、画像・動画の取得も可能である。 PCに接続して、Windows 10のPCであれば標準の「カメラ」で利用できる。Macbook では QuickTime で利用できるらしい。 アンドロイド型のスマートフォンでも利用可能で、アプリとしては「Depstech Camera」「Teslong Camera」が推奨されているが、 「CameraFi」「MScopes」等のアプリでも使用可。 アンドロイドでも一部のスマートフォンでは利用できないらしいが、実際には繋いでみないとわからない所がある。

<レンズによる結像の基本>

凸レンズで像を得る際の基本的な関係を整理しておこう。図のようにレンズから \(a\) だけ離れた物体の像が距離bの位置に得られた時、焦点までの距離を \(f\) として次の関係がある:

\[ \frac{1}{f} = \frac{1}{a} + \frac{1}{b} \]

物体の大きさ(長さ)と像の大きさの比は \(a/b\) になるので、 大きな像を得たければできるだけ \(b\) を大きく、\(a\) をできるだけ焦点距離fに近づければよい。 あるいはそもそも遠方にある物体(\(a \gg f\))の像を得る場合には、 焦点距離の長いレンズほど大きな像が得られることになる(\(b \approx f\))。

<レンズの明るさ・分解能・ピント>

得られる像を明るいものにするには、そもそもの取り込む光の量が大きく(レンズの直径 \(D\) が大きい)、 像が小さ(焦点距離 \(f\) が短かい)ければよい。 F 値といわれるものは、\(f/D\) で定義され、えられる像の明るさの目安となる(F 値が小さい方が明るい)。

レンズに平行光線が入射してきた時、理想的には焦点で1点に収束するはずだが、 レンズの上端から入射してきた光と、屈折せずに入射してくる光には光路差(\(L_\rm{x} - L_0\))があり、 光の干渉が起きてボケが生じる(エアリーディスク)。このボケ具合はおよそ光の波長 \(\lambda\) とレンズの直径 \(D\) の比 \(\lambda/D\) で評価される。 したがって観測する波長が一定ならレンズの直径の大きい方が、詳細に物体の細部まで観察できることになる。


焦点の位置を探ろうと像のサイズをチェックした時、判別可能なサイズ \(\epsilon\)(普通0.1 mmぐらい)に達しない領域の幅を焦点深度と呼ぶ。 焦点深度はレンズが小さいほど大きい。同様のことはレンズに絞りを入れても実現できる。 なお物体との距離についてもピントの合う領域を考えられ、被写界深度と呼ばれる。


目次のページへ