大学の「事務一元化」は、この4月の閣議決定「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画」の中でも文部省から積極推進が謳われている“国策”。京大でも一昨年の人事関係事務の時計台への集中化に続き、来春、宇治地区と農学部がまず走り出す形で、部局事務の再編が進められようとしています。ここでは、“先進部局”、農学部の事務統合の特徴点について紹介します。
事務の一元化といっても、その具体的な姿は所によっていろいろです。農学部の場合、特徴的なのは定員と定員外・非常勤職員の配置が、この機に明確に区分されたことでしょう。
農学部の事務の再編案は、この11月の農学部教授会で承認され、来春から実施される運びになっています。再編案では、中央事務、専攻(教室)事務室には非常勤職員は配置されません。専攻事務室は規模を縮小され(2名程度)中央事務の“出向先”(「専攻固有事務」「中央事務ではできない教務関係事務」などを行うという位置付け)の扱いとなり、定員の事務官はすべて事務長の下におかれることになります。そして“研究室事務”として、各研究室に1人ずつの非常勤職員を割り当て、その人事権は教授に属するという形にするというのです(人件費は中央事務から)。大部分の事務を、教室事務という中間項を介さずに行う体制を目指すわけです。
中央事務 | 専攻事務 | 研究室事務 | |
職 員 | 定員 | 非常勤職員 | |
人事権 | 事務長 | 教授 |
この改革にともなって、専攻事務から中央事務に大幅に人を引き上げ、中央事務や専攻事務の非常勤職員は研究室へ、そして研究室に配置されている定員(農学部にはまだこうした人がおられる由)は中央事務・専攻事務へ配置換えと、大幅な移動が行われることになります。これを事務長サイドから見れば、専攻事務をライン制に組み込んで、教授から指揮命令権を取り上げた代わりに、秘書として身近に使える非常勤職員の人事権、指揮命令権を全面的に与えたということになるでしょう。
こうした再編が、何をもたらすかについては、慎重な検討が必要でしょう。実務面では、ネットワークを介したやり取りですむものはよいですが、実際に「もの」が動く段階で「中央直結」でうまく仕事が進むかどうかは不安があります。一方この再編は、従来位置付けの低かった教室系事務職員の待遇改善に道を開くものです。ことに全大教ニュース(No.125、99.11.10.)が伝えるように、人事院が以前示した方針を翻して、教室系事務に専門職員を置かない態度を示している中では、待遇改善のための現実的な選択かもしれません。
また非常勤職員にとっては、「同じ仕事で待遇は半分以下」という状況は名目上はなくなるものの、待遇・仕事の評価が上がるわけではありません。また全員が一人職場で、人事権を持った教授の下に置かれるわけで、これは典型的な“セクハラ”の温床となるパターン。今回の農学部の事務一元化では、定員外職員(研究室職員)の教育・研修制度を制度化することも謳われていますが、その内実がどのようなものになるか注目されます。