今年度の補正予算で、桂御陵坂に第3キャンパスを作るという計画が認められ、いよいよ長年の懸案が一つの解決へむけて動き出そうとしています。他の大学もこうしたキャンパス問題を、多かれ少なかれ抱えているわけですが、今回のいちょうでは、東北大学の刈田さんにお伺いした東北大学のキャンパス事情を紹介します。
京大の第3キャンパス構想が具体化しつつあるようですが、ご参考までに東北大学の抱えるキャンパス問題を紹介しましょう。
東北大学にはかねてより、現在の東北大本部や研究所群がある片平地区(①仙台市の中央部にある一等地)と、農学部がある雨宮地区(⑤これも街の中)とを、伊達正宗で有名な青葉城があった青葉山地区(③現在、工学部、理学部、薬学部がある)に隣接したゴルフ場を県(所有者)から買い取り、そこに移転し、タコ脚(どれも仙台の中ですから、正しい表現ではないと思いますが)の東北大学をまとめようとする計画があります。文科系のある川内地区(②青葉山のふもと、上記の青葉山地区とは山の上と下の関係)と医学部、歯学部のある星陵地区(④)は当面動かないという方針(1994年9月、評議会決定)です。移転の資金は現在地を宮城県あるいは仙台市に売却した金で賄うという計画でした。
ところが、県からゴルフ場を借りて、実質的に運営している「仙台カントリークラブ」が、継続使用の権利を主張、東北大学への売却に反対し、現在裁判で争っており、移転問題は宙に浮いている状態です。ゴルフ場の主張は「県の所有は名目であり、ゴルフ場を買い取った資金は仙台カントリークラブのものであって、県に寄付した時に、県が将来売却する話など聞いていない。県にそんな権利はないはずである」というものです。県は「県の所有ということで、購入できたゴルフ場であって、県の将来計画には反対しないという約束であったはず」と言っています。したがって、現在片平、雨宮両地区での概算要求(施設関係の)は完全にストップさせられており、裁判の決着待ちですが、あと何年かかるか誰も分かりません。学長は両地区には我慢してもらい、両地区以外の地区(青葉山、川内、星陵)を優先して予算を組むということで施設の改善を進めているようです。
さらに問題なのは、バブルがはじけ、両地区を購入してくれるところが見つからないし、たとえ見つかっても、売却金だけでは移転できない状態になってしまいました。組合が学長交渉で、それを指摘すると、「文部省は、移転の土地さえ用意すれば、建物を作る義務がある」などと苦しい答弁をしております。けれども、はたしてそんなうまい話があるのか疑問です。東北大学にとっては、最重要課題のはずが、現在だれもが触れたがらない話題のひとつになってしまいました。もちろん、「移転を中止し、話をもとに戻すなどありえない」と学長は組合へは言っております。
東北大学の組合では、この問題をどういう切り口から進めるべきか、模索中といったところで、悩んでいるのが実情です。他大学でのいろいろ取り組みなどあれば、是非参考にしたいものと考えています。