いちょう No. 97-5 97.8.27.

9月1日は64年前のこの日、関東大震災の起きたのを記憶に止める日、「防災の日」です。一昨年の神戸の震災の直後は、われわれもガスボンベや薬品の転倒防止の徹底など、改めて、いろいろ地震対策を講じたのですが、だんだんに忘れ去られようとしているように見えます。防災の日にあたって、地震が専門の尾池学部長から、外国出張などで忙しい合間を縫って、メッセージを寄せていただきました。


「防災の日」に寄せて

尾池和夫(教員・地震学)

理学研究科が、教職員や学生にとって、理学の研究と教育のために快適な場所でなければならないのは当然ですが、その最も基本となるのは構成員にとっての安全の確保です。そのため例えば安全委員会が置いてあって、10名ほどの委員の方々が、理学研究科の安全性の向上のために、いろいろの検討を行っています。しかし、いうまでもなく防災は構成員の皆さんの意識と準備によって実現するものです。

京都大学でも地震対策に関するワーキンググループが、阪神・淡路大震災のあと、「京都大学の地震対策について」の報告を出したのは、京大広報(1996年3月15日号外)でご覧になったと思います。今年度は、とくに理学研究科の中での震災対策の進め方も検討していただくように、理学研究科の安全委員会にも年度始めにお願いしました。

日本学術会議の阪神・淡路大震災調査特別委員会のレポートでは、2年半前の地震で、1億円以上の被害を出した研究機関が、京阪神地域に42ありました。大学が26含まれています。山城盆地は5つの大規模な活断層系の末端に形成された盆地です。私たちの職場は、大地震の繰り返しで出来た山城盆地に位置します。理学研究科のある北部構内には、約2000年前に大地震を起こしたあと動いていない花折断層が通っています。いつ重力加速度を超えるような強震動があっても、被害を最小限に押さえられるよう、教職員の一人一人が日頃の準備と点検を怠らないよう、あらためてお願いいたします。


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