いちょう No. 97-4 97.8.21.

ダイオキシンは、人工的な毒物としては最強のもの(暫定的な大気の環境基準は0.8 pg-TEQ/m3。あんまり濃度が低くてイメージしにくいが、琵琶湖にダイオキシンを耳かき1杯入れて、よく混ぜたぐらいの濃度。TEQは、毒性を2,3,7,8-TCDDに換算した値)といわれ、日本でもようやく、昨年あたりから本格的に問題にされるようになってきました。ダイオキシンは、塩化ビニルなど、塩素の入った物質を焼却する際に副産物として生成する事が知られています。この1月には、厚生省から「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」が出され、先にも掲載したように、文部省は7月23日、学校(小中高)でのゴミ焼却炉の原則使用禁止を通達しました。今号のいちょうでは、環境保全センターで有機廃液の処理に携わっておられる真島さんに、ダイオキシンの問題について一文を寄せていただきました。塩素の入ったゴミの分別など、われわれとしても、現実的な対応策を考えていく必要があるように思います。


ダイオキシン考

環境保全センター  真島 敏行

普段、焼却に携わるものの一人として、昨今のダイオキシンに関する動向は気になるものである。

排ガスで目に見えるもの(煤など)は不快であり、すぐに分かるが、たとえ目に見えなくても分析器機を使ってリアルタイムに測定できるもの(NOxやCOなど)でも有害物の判断が付く。しかしダイオキシンとなると、さらに微量な単位で毒性が高く、分析に時間がかかるとなると、なかなか感覚的にはとらえにくい。しかも1検体の分析費は高価であるため、たびたび分析する訳にもいかず、実にやっかいである。

ダイオキシンのガイドラインに、新設炉に対して24時間連続運転、炉温が850℃以上、滞留時間2秒以上、一酸化炭素濃度30 ppm以下などが示されている(既設炉に対しては、これより緩い基準が設定)が、設備が整っていれば調整は可能である。しかし、小規模の焼却炉では、どの項目をも満足しがたいことだろう。せめて塩素の入らないゴミだけの焼却くらいならいいのではないだろうか。

ある雑誌に、韓国において民間でのドラム缶を用いた焼却について、肯定も否定もできないという、本音のような意見が出されていた。発言者は、韓国の廃棄物に関する専門家である。その反面、NHKのテレビで、ドイツのある町の子供がマイクに向かって「日本では家庭でゴミを燃やすいる人がいるって本当ですか?」との返事。この町では、家庭での焼却を、条例で全面禁止しているのである。

便利さの追求と、そこから発生する廃棄物の処理 末 かっては、より生産にのみ目が行き、金がつぎ込まれがちであった。今や宇宙船地球号を守るべく、閉じられた輪の中での循環を見極めねばならない時代になったといえよう。行政のみに任せるのではなく、よく言われる言葉であるが『グローバルに考え、ローカルに行動しよう』ということになるだろうか。地上最強の毒物、ダイオキシンから環境全般に気配りをされてみてはいかがだろうか?


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