いちょう No. 99-4 99.9.16.

教員の方から、今回の独立行政法人化の動きにかかわって寄稿いただいています。


国立大学の独立行政法人化に思う

「反対」はわかる。でも現在の体制に守るべき最善のものを見出せない

国立大学の独立行政法人化をめぐる動きがあわただしい。最近職組でも独立行政法人化の問題で、話を聞く機会があったのだが、そこで感じたことのメモのつもりで認めさせていただきたい。

「独立行政法人化反対」はよいのだが・・・

私の聞いた話は、現在の動きがいかに現在の大学における研究を危機に陥れる危険性があるかということのたいへんに明晰なもので、先に「いちょう」などに書かれていたことの背景が随分と納得がいった。われわれとしては、「独立行政法人化反対」という原則的立場で臨むべきであろう。それにもかかわらず、話とそこでの議論にある種の違和感を持った。その理由は多分、国立大学という現在の体制に守るべき最善のものを見出せないことにあるのではないかと思う。政府の動きが確実に研究環境を悪化させる方向にあるという前提に立った上でそれに反対する、今の組合の姿勢が、現在の国立大学の体制を維持するという方向で一貫していることに飽き足らない気持ちを持つ。

今の「国立大学」は最善のあり方ではない

私は今の国立大学という体制が最善ではないと感じている。独立行政法人化の議論で、国からの独立性ということが語られる。うまく表現できそうにないが、私が最善ではないという時の不満とするところは、政府からの独立性という言い方よりも、国家予算で国策として維持されなければならない科学の意味がつかみきれないところにあるようである。一つの維持発展すべき文化として社会的歴史的に認知された学問ではなく、時の政府の政策によって容易に見直されてしまう学問。今の国立大学における科学研究が、極端に言えば単に政府に対する既得権の上に立っているという危うい状況が、私が不満に思うことの理由のようである。

「民営化」でなぜいけないのか

「維持発展すべき文化として社会的歴史的に認知された学問」という立場にたった時、私立大学と比べた時の国立大学の必要性を卑近なレベルでの議論に耐えるようにする根拠が見つからないように思う。今の私立大学の状況の困難さはとりあえずおいた上で、どこかに民営化ではなぜいけないかを主張する確からしい論理はあるのだろうか。


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