いちょう 99-18 00.1.13. GREETING99_NY1 GREETING99_NY2

明けましておめでとうございます

支部長 竹本 修三

皆さん、明けましておめでとうございます。

心配されたY2K問題のトラブルもほとんどなく、穏やかな新年を迎えられたことと存じます。

私も年末年始は家でおとなしくしておりましたが、1月3日には研究室の留学生達が家に来てくれて、楽しいひとときを過ごしました。

いま、私の研究室には10名の大学院生がおりますが、そのうちの7名が日本人、3名が外国からの留学生で、彼らはそれぞれ、ハンガリー、インドネシアおよびケニアから来ております。また、男女の比率では、男子学生6名に対して、女子学生が4名となっており、この数字を私が学生の頃と比べますと、まさに隔世の感があります。現在在籍している4名を除くと、80年間の地球物理学教室第一講座の歴史のなかで、大学院に進学した女性は、私の知る限り、大先輩の名誉教授の奥さんになっている女性一人だけです。

ハンガリーとインドネシアからの留学生はそれぞれの配偶者を連れ、それにケニアからの留学生と日本人女子学生をまじえた総勢6名が私鉄の最寄り駅に到着したのは3日の午後3時でした。私は娘と2台の車で彼らを迎えに行き、家まで連れてきましたが、折からイスラム教の「ラマダン(断食)」の季節に当たっており、敬虔なイスラム教徒であるインドネシアとケニアの人達は、日没まで飲み物や食べ物を口にすることができません。そこで、私の家で飼っている黒い雑種の犬を連れ、みんなで裏の山に散歩に出かけました。

人家を離れて雑木林に入ると、ハンガリー人の夫婦が「この景色はハンガリーに似ている」と言いました。私は、ハンガリーには行ったことがありませんが、ドイツやオーストリアでは同じような雑木林を歩いたことがあるので、さもありなんと思いました。

しばらく歩くと、松食い虫にやられて枯れた松を切り倒したあとの切り株がありました。私が年輪を数えて「この木は30年以上経っている」と言うと、インドネシア人の夫婦が不思議そうな顔をしていました。そう言えば、南方からくるラワン材などには、このような年輪は見えません。年間を通じて温度変化のほとんどないインドネシアで育った彼らにとって、このようにはっきりした木の年輪を見るのは初めてのことだったのかも知れません。

山道が狭くなり、坂が急になったところで、「秋にはこの辺にキノコがたくさん生える」と私が言うと、ケニアからの留学生が「ケニアにも大きなキノコがある」と言いながら、両腕で大きな輪をつくって見せました。その直径は70cmほどあります。私が信じられないという顔をしていたのでしょう。「先生、ホント。とてもおいしい。牛の糞で育つ。キノコが採れたら親戚を呼んでパーティを開く」と彼は真剣な表情で説明してくれました。いい青年です。いつかケニアに行って、そのキノコを食べさせてもらうことを約束しました。

途中で回り道をして、市営の森林公園に入り込み、すべり台で遊んでから、夕日の沈むのを見て、家に帰りました。家では妻と娘が鶏肉を中心としたイスラム教徒向けの料理を用意してくれていました。パーティの始まりです。日本の伝統的なおせち料理も彼らはほとんど問題なさそうでした。

GREETING99_NY3

こうして2000年が始まりました。今年もどうかよろしくお願いいたします。


「いちょう」へ