この4月から重点化で取り残されていた、瀬戸など遠隔地の重点化が実施の運びとなります。同様に、さまざまな企画が走り出すわけですが、その中で注意すべきものに、再生医科学研究所の法的任期制の導入、関西電力の寄附講座があります。この問題について、3月31日、定員外職員の任用中断日の集会での、藤村さんの報告から抜粋します。
昨秋来、部局長会議などで議論が重ねられ、3月10日の評議会で、まもなく発足する「再生医科学研究所」(「胸部疾患研究所」と「生体医療工学研究センター」を再編)において、昨年成立したいわゆる「任期制法案」(「大学の教員等の任期に関する法律」)に基づく任期制を導入するということが決定されました。導入されるのは、研究所に全部で5つある部門のうちの一つの「再生医学応用研究部門」の教授1、助教授3、助手1のポストです。任期は5年で、再任可というものです。具体的な研究例として、「肝臓病患者の肝臓の健康な細胞を試験管内で培養して再び患者に戻す」というようなことが挙げられているようです。これは基礎というよりは臨床応用の性格が強い部門のようで、確かに、時限を設けて成果を出すというプロジェクト的性格が似合う分野ではあるかも知れません。実際のところ、「再生医科学研究所」の母体となる生体医療工学研究センターでは、これまでにも任期制がとられていて、5年毎に新しいプロジェクトを発生させ、その新しいプロジェクトの下で新たに5年の任期で再任されるという、いわゆる「紳士協定的任期制」の運用がなされていたようです。今回の任期制もこれに近い形になりそうです。
けれども、そうならば、「敢えて法律に基づいた任期制とする必要があるのか?」という疑問が持たれます。また既に公募が締め切られているようで、「任期について学内で合意する前にどういう形で公募文書が出ていたのか?」という点も疑問です。
エネルギー科学研究科に、「エネルギー社会システム計画(関西電力)講座」という寄附講座が、この4月から3年間設置されることになりました。宇治地区に置かれ、毎年4千万円ずつ計1億2千万円が寄附されます。
研究内容は、「経済・エネルギー・環境」という3つの観点のバランスをとりながら、将来の電力事業展開の総合政策立案のために、新しい地域共生型社会システムの計画とそれを普及教育していく方法について、ということのようです。教授には東芝の原子力事業部の方が兼任され、客員助教授には経済学サイドからの科学技術を専門とする中国の大学の方が来られることが決まっているようです。
今回の寄附講座が、これまで京大に導入された3件の寄附講座と異なるところとして、2つあげられます。一つは「関西電力」という企業名が入っていること、もう一つは客員教授の給与が本人の所属会社と寄附講座の双方から支払われる(寄附金の3分の2近く) ということです。
教員部会の対応が遅れたまま、何もせぬうちに、ここまで来てしまいました。任期制については、学問分野のスタイルに応じて一概に是非を言えぬ部分もあります。寄附講座についても、全国的には寄附講座の3分の2ほどは企業名が入っているらしいですし、実際にどういう運用が行われていくのかが重要だと考えられます。至急、問題点を整理して対応を考えていきたいと思います。