イギリスはオックスフォードに行っておられた化学分会の藤村さんが、このほど帰国されました。以下は藤村さんのイギリス印象記です。
七月初めから三ヶ月ほど英国オックスフォード大学に協力研究に行って来ました。会議やら組合の雑用から解放されて(出発前日まで遅れていた教研集会の報告集の原稿作りをしていました)、研究と家庭だけのシンプルな毎日を過ごすことが出来ました。
外国はこれが殆ど初めてなので、いろいろなことが新鮮に感じられましたが、物価の安さには驚きました。イギリスは他のヨーロッパ諸国やアメリカなどの二倍ぐらい物価は高いのですが、それでもほぼ全ての物が日本円に換算して半分から三分の一の安さでした。現在1ポンドは約160円ですが、少し前まで300円とか600円(その昔は900円)だったようですから、ひとえに円高のなせる業といえます。
イギリスの人達の暮らし振りは、やはり一言で言って「質素」に尽きると思います。今の日本では「ケチ」ということになるのでしょうが、日本人が忘れてしまった精神を持ち続けているように感じました。もっとも向こうから見れば、日本人はイギリス人が忘れてしまった「勤勉」の精神を持ち続けていることになるようです。
イギリスは今でも「パン屋の子供はパン屋」といった感じで、いわゆる“上昇志向”がないと言われます が、そのぶん自分の仕事に誇りと自信を持って働いているのかなと感じることもありました。空港に到着してオックスフォードへの直行バスに乗ったときのことです。運転手に何歳から有料か尋ねたところ、「五歳から。その子は何歳?」「十日ほど前に五歳になったばかり。」「五歳から有料だよ。何歳?」「だから五歳。」「いいかい。五歳から有料だよ。何歳?」「四歳。」「よし。そのまま乗って。」思わず爆笑でしたが、これは自分の領分だという事で、自分の裁量で判断しちゃうようです。その反面、自分が知らないことは世の中に存在しないかのように言い張るので困ったこともありました。
向こうでは労働党の新しい若い党首のトニー・ブレアが盛んに持ち上げられていて、ニュース番組でもメージャー首相が出なくても、ブレアが大きく扱われない日は無いといった感じで、次の選挙では労働党が勝つような雰囲気でした。もっとも彼の人気は左派を切り捨てたことにもあるようで、まあどこの国でも同じようなというか...。大学はサッチャー政権以後、締め付けが厳しくてやり繰りは苦労しているようですが、ブレア政権が誕生したとしてどうなるのか興味を持っています。