去る6月26日(木)、京大職組の総長交渉がありました。交渉は、6月24日の評議会での副学長制の導入に抗議する学生の動きをにらんで、ものものしい警戒の中で行われました(この日は何も起きなかったが、7月11日には、抜けだそうとした総長の車を学生たちが取り囲み、総長団交・折衝が4時間にわたって行われた。副学長制については、「いちょう」でも後ほどお伝えできる予定です)。交渉では、データも示して、文部省の職員の給与水準が他省庁に比べて、きわめて低いことを認めさせ、待遇改善に向けて努力する旨を、総長に約束させました。また、空きポストの運用についても、総長に認識を新たにさせたのではないかと思います。交渉全般についての詳しい話は、本部の職組新聞でも紹介されると思いますので、ここでは理学部からの参加者が積極的に加わった、教員の任期制についてのやり取りを、化学の藤村さんのメモをもとに紹介します。また、藤村さんには今回の総長交渉に関する感想も寄せていただいています。
国立大学及び文部省への、世論の風当たりは強い。その背景には大学定員の3/4が私立大学であるという事実がある。例えば昨年、京大のアメフトが優勝したが、その後で「二人の子供を高い授業料を払って私立大学に行かしているのに、京大の学生はのうのうとあんなことをやっている。その挙げ句に殆どが留年するとはけしからん。」などという抗議の手紙が来る。また立場上、色いろな政府系の委員会に出席する機会があるが、そういった所でも同様の空気で、「国立大学をすべて民営化したら1兆5千億円税金支出を減らせる」と言い出す議員もいる。私としてはこうした乱暴な論理に対して、それは違うんだと主張はするが、世間の風は冷たい。
副学長制度(来年度概算要求項目に先日決定した)については、昔は学長と学生部長だけでやっていたのが、今では 全学的にやらなければならないことが増えていて、そういう中でまず試験的に学長特別補佐をおいた。これは全くのボランティアなので副学長にして待遇改善することにした。
この問題については、先日の国大協総会でも激しい議論のあったところだ。東大や京大はやっていけるから旧帝大だけ民営化してくれという発言もあった。「独立行政法人化」は、現時点で内容がわからないのでノーコメント。
任期制については、「旧帝大などが自校出身者が多くて閉鎖的という批判をかわす ためのアクションが必要である」ということが前面に出ていて、付け足しとして「それはまあ色々経験を積むことにもなるからいいだろう」という雰囲気でした。自分の学部(医)で自校出身者が多いのを棚に上げて、「大学は門戸を開けということに何もしてくれなかった」と言う都合の良さ。挙げ句の果てに、ズッと同じ所に居るのではなくて若いときにちょっと動けば結局戻ってきてもかまわないということで、教授・助教授の自校出身者比率を本気で変えるつもりなのか疑わしいような気もしました。「ズッと留まっているのと外に出たことがあるのとでは違う」ということならば、任期制以外の制度も可能なはずです。
総長はこれまで、「全てを待遇改善することは出来ないから」ということで、あえて任期制を法制化することを正当化していました。それならば待遇改善の無い今回の法制化の意味は何かというやり取りで、「いや待遇改善ばかり言っていたのではなくて...」と苦し紛れになるなど、今あえて法制化して任期制を行うことについて納得のいく説明は得られませんでした。
交渉を通して、「国立大学なんて小さな存在で風当たりも強くて、それの長だからといって何ほどの者でもない。」という姿勢になることが多く、我々が押し戴くには寂しさを感じました。
編集部でつかんだ情報によると、(交渉の席では、まだ何もやっていないといっていたが)総長交渉の2日前の部局長会議で、任期制について各部局での意向調査が提案され、7月8日の部局長会議で、部局の状況などが議論されました。そこでは、生物系でプロジェクト研究的な分野での任期制導入に積極的な意見が出たが、他の部局はおおむね慎重だったようです(「給料が3倍になるなど、条件しだいでは...」というところ)。理学部長は、理学部では導入の必要なしと発言しています。ただし明確に反対を唱えた部局長は、わずかだった由。