いちょう No. 97-11 97.11.11.

97 総長選挙インタビュー

益川 敏英 基礎物理学研究所所長

[総長選挙に当たって]

次の総長の在任期間4-6年はまさに大学が荒波にもまれる時代。そういう時代の総長は「部局の利益代表」の意識で選んでほしくない。大学構成員の意見をふまえて将来を見据えることができる人に期待する。この一点につきる。フェアで人の意見を聞き、果敢に行動できるアイデアと実行力の伴う人を選びたい。井村さんは人の意見を聞く耳を持っておられたし、10月の京大・東大エージェンシー化の動きの際の機敏さ、適切さを見ても分るように評価できる人であった。

[独立行政法人化]

現在の政治家は私学出身者が多く、大学といったときに学部教育にしか目がいっていない。政府に近いところの大学関係者も文系の人は、独立行政法人化してもやっていけると思っているようである。理系が一番被害を受ける。私も学術会議や全国所長会議などで発言をしているが、反対でまとまるところは限られるであろう。大学に割り当てられる予算が、法人化当初は現在と同額程度あったとしても、次第に縮小されることはさけられないであろう。この問題でも総長は大学審議会で重要な役割をはたす。

[教員任期制]

本来、任期制導入は研究活性化・人事交流が建前だったはずであるが現状をみているとプロジェクト解消や試験的登用としてこの法律が使われようとしている。これは問題が多い。研究の活性化の為の人事交流は任期制のみで実現するものではない。当方の基礎物理学研究所では、紳士協定としての任期制と人事の際の公募制、内部昇格を出来る限り避ける等考える限りの努力をしている。試験的登用は延び盛りの時期を次の職探しのために、せこい仕事に向かわせる。特に物理の理論の場合、助手の時に一番いい仕事をすることが多い。助手の時にしっかりと腰を据えて研究をすることが重要で、強制的な任期制はそれをだめにする。プロジェクト解消型の場合、トップはいいかもしれないがその下で働く研究者にとっては搾り取るだけ搾られて捨てられることになるわけで、長期的に見た学問にとっていいはずがないであろう。

人事交流はたとえば内部昇格を禁止することで十分効果がある。ドイツなどでは実際に行われている。

[総長選挙制度]

総長選挙制度改革は実際に議論になっている。今回も従来土日に行われていたものを金土に移した。これ自身は僅かな改善だが、是非ともみんなに投票にいって、投票率を上げてもらいたい。改善すれば構成員の関心が高まることを示して欲しい。改善が目に見える成果をあげることを示すことで、改革の必要性を訴えていくことができる。


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