来週は総長選挙です。今回の総長選挙に寄せて、坂本前支部長から寄稿していただいています。
最近、京大の話題で新聞紙面がにぎわうことがままありました。その内容が京大の将来のあり方に大きく関わることが多いように思い、ひとこと言わせていただきます。折しも11月14/15日には総長選挙ということでもあり、京大の将来をどうするのか皆さんとともに考えてみたいと思います。
行政改革の一環として国立大学を独立法人化するという案が自民党などから出され、中でも東大・京大を先行させる、という提案がされていると聞いています。ハーバードのように私学でも最先端でやっているのだから、東大・京大でもできるということのようですが、これには山口大学長の広中さんが朝日新聞への投稿で、明快に批判をしています。詳しくは紹介できませんが 300余年の歴史の中で蓄えられた莫大な資金を、10数名の資金運用のプロが運用してはじめて成り立っているということだそうです。そのような資金も人材もノウハウもない日本の国立大学は民営化されると、とんでもないことになることは明らかです。
報道された「預け金」問題も、国立大学の会計法が現状にあっていないことをもって、「独立法人化すればもっと自由な運用が出来るようになる」などという議論があります。違うと思う。現状にあわない法律を改正して、より効果的にすることこそが行政改革であるはずで、それを放置して、見かけ上の公務員の数を減らせばよい、と言う発想は本末転倒でしょう。
今年の6月、多くの教員の反対にも関わらず任期制が法制化されました。現在、例えば東京外国語大学では、新設の大学院講座を任期付きでスタートするということです。今後いろいろな形で、任期制導入の圧力が加わってくる可能性があります。京大の現総長は、大学審議会メンバーとして導入に関与されたわけですが、新しい総長には、導入には反対する立場に、ぜひ立っていただきたいと思います。
もともと、教員の流動化を促進して大学を活性化しよう、ということが動機であったはずです。そして理学部の場合人事交流もすでに非常に盛んです。さらに活発にするためには、新任地での研究環境の保証のための予算措置、転居先となる住宅の確保など、移りたくなるような条件を作ることが重要で、任期切れで脅迫することはいかがなものでしょう。
教養部が改組されてから5年が経ちます。理学部では専門教育が2回生におろされて、学生諸君は非常に忙しくなったといっています。一方、一般教養では語学の教員の過半数が非常勤となるとか、科目によっては受講生が3000名もいる講義があるとか、改組に伴って教育内容は改善されたのではなく、非常に矛盾が拡大しているという現状です。全国的にはさらに、物理と数学の飛び入学などという問題もあります。
同僚と「きょうびの学生は...」といった議論をしますが、その時に出てくる結論は1、2回生の間に少人数教育をやるというものです。確かにその通りなんだけど、どうやってそのためのスタッフを確保するのか、予算は、教室は...。定員削減で、どんどん人が減らされている現状を打開しない限り、不可能な話です。
部屋の狭さは皆さん頭の痛い問題だと思います。実験室もまさに足の踏み場もない状態。万一の場合を考えると、恐ろしいくらいのところもあります。上に述べた少人数教育でも、結局部屋がないので実現が難しいとなってしまいます。そういう意味で広いキャンパスは歓迎です。が、現在流れてくる噂など聞いていると、例えばバブル崩壊で売れ残った土地を京大に買わせるだとか。なんだかなあ。
やはり大学のキャンパスには、学生がいて、院生がいて、教員職員がいて、それが地域の中に受け入れられて、大学として機能していくものだと思います。新しいキャンパスはどういう大学を、どういう町を作っていくかのビジョンのもとで考えていきたいですね。
ちょっと個人的な意見を並べさせてもらいました。どう考えるかはともかく、いろいろな問題があることは、一致するところではないでしょうか。今度の総長選挙では、総長になろうとする人が、いったいそれぞれの問題で、どのように考えているかぐらいはわかった上で、投票したいのですが、現在の選挙制度ではほとんど知る手がかりはありません。理学部の教員部会は少しでも参考になればと、情報収集につとめます。はなはだ不十分ですが、今後出されるビラやホームページ
http://www-tap.scphys.kyoto-u.ac.jp/~yamada/Union/
にご注目ください。