いちょう 97-21 98.1.22

この4月1日から、「技術専門官」「技術専門職」が導入されます。この問題について、当事者である技官の方でもご存知ない方が居られるような状況なので、「いちょう」でつかんでいる情報を、少しまとめて紹介します。


技術専門職・技術専門官の導入をめぐって

「専門行政職構想」の頓挫

技官の処遇の改善には、まず「官職」の設定が重要であることから、職組では20年ぐらい前から、「専門技術職」という「職」の設定を求めてきました。しかし新しい職の設定には、大きな抵抗があります。そこで次善の策として、「専門行政職」(専行職)という形で官職の設定が図られました。専行職というのは15年ほど前にできた、大学卒業程度の専門的知識を持つ行政官(航空管制官など)を対象とした官職です。この策は、国立大学協会も押すところとなり、導入に向け全国的に「技官の組織化」が進められました。しかし最初積極的だった文部省当局が豹変したこともあって(ある学長は公然と「だまし討ちだ」と語ったらしい)、結局実現しませんでした。

技術職員待遇改善検討会

この専行職構想が潰えた後、96年4月に国立大学協会や文部省は「技術職員待遇改善検討会」を発足させ、新しい方策の検討に入りました。そして、昨年3月に中間まとめ、8月に結論、という速いペースで検討が進められました。この検討会の結論では、①技官の組織化の推進、②新たな職の導入を挙げました。しかしすでに全国の8割以上の大学で「組織化」が完了していたことを考えると、実質「新たな職」を目玉にしたといってよいでしょう。これはまさに、20年近く(以上?)にわたって職員組合が要求してきたことです。そして一昨年成立した「科学技術基本法」も追い風となって

「教室系技術職員個々の技術の高度制、専門性に応じて新しい職(たとえば『技術専門官』及び『技術専門職員』)を導入し、その職務を明確にすることによって教育研究組織における位置付け、役割を明らかにするとともに、客観的職務評価に基づく処遇の確保を図る必要がある。」

と例示されたとおりの「職」が訓令の形で、設定されることになりました(以前、職組が要求していた「専門技術職」を「技術専門・・・」と入れ替えたのは、当局のせめてもの“意地”でしょうか?)。

文部省訓令第33号

こうして昨11月17日に出された文部省訓令第33号(「国立大学、国立短期大学および国立高等専門学校の技術専門官及び技術専門職員に関する訓令」。今年4月1日付で実施)では、「高度の専門的な技術を有し、その技術に基づき、教育研究の支援のための技術開発及び技術業務並びに学生の技術指導を行うとともに、技術の継承及び保存並びに技術研修に関する調査研究を行う」ものとして「技術専門職」が規定されています(「技術専門官」では、技術につく形容詞が“極めて高度”になり、また技術研修の“企画及び連絡調整”にあたることになる)。「学生の技術指導」という文言が入ったのは、画期的といえるかもしれません。

訓令の形で「職」が設定された重要な影響は、学長に任免権が移り、「選考採用」の対象となることです。「選考基準」が問題ですが、訓令を受けて出された文部省人事課長通知(昨12月11日)によると、「選考は、次に掲げるところに基づき、国立大学等が定める基準により行わなければならない」とあり、「技術専門職員」については

「原則として、行政職俸給表(一)4級以上の者であって、かつ、資格の取得等により、高度な専門的な技術を有することが客観的に明らかな者」

となっています。この「原則として」をどこまで強く読み込むかで、いろいろ考えが出てきそうです。また選考基準としては、国家試験合格など8項目が、一部の大学の事務から提案されている由です。

技術職員問題の行方

今回の「技術専門職員」の導入で、4月1日以降、技官の構成は表のように変化します。しかしこれで、技術職員問題は解決に向かうのでしょうか?

「専行職移行」が話題になった時、「いちょう」では印象的な2編の寄稿を受けました。加藤(利)元支部長は、「91年4月に行われた技術職員の組織化は、・・・・どうも形式的組織化に終り、年功序列により役職を割り振ったに過ぎないようである。この組織化により技術職員の活性化が図られたようには見えない。仮に専門行政職が導入され、そこへの移行が実現したとしても、果たして技術職員の業務が大幅に活性化するであろうか。」(いちょうNo.95-11)と疑問を投げかけられました。また、技官の麻生さんからは「技官だけでなく、技官の仕事に密接に関係する教官中心となって『これからの技官』を考えていかないと専行職俸給表が適用されても名前が変わっただけで、実質いままでと何も変わらない状態が続くのではないか」(いちょうNo.95-6)という指摘がありました。しくみは変わろうとしています。技官から、また教員の側から、手を差し伸べ、握手が必要な時ではないでしょうか。

職名技術専門職技術職員
技術専門官技術専門職
格付け行政職(一)6,7,8級行政職(一)4,5,6級行政職(一)1,2,3級
任用大学の選考基準に基づき(委員会が)選考大学が採用
昇格大学の昇格基準による通し号俸昇格

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