現在、技官の専門行政職(以下専行職)移行について、「秒読みとは言わないが分読み段階に入った」(京大人事課長)段階にきています。京大職組本部の技官部会では、9月下旬から全教室系技官を対象とする署名活動に入りました。先のいちょう(9月22日号短信)でも取り上げましたが、事態の緊急性に鑑みて今回のいちょうでは技官問題の現局面について、理学部の技官部会担当である堤さんに少し詳しく解説をお願いしました。
教育研究において技術業務を担う教室系技術職員(以下もっぱら技官。技術職員には、他に病院の検査技師などがある)は、実際に担っている業務内容や果たしている役割が、法令上の位置付けや学内における地位、待遇といちじるしく乖離しています。そこでこの10年、私たちは専行職への移行を求めてきました。
専行職というのは10年前に新設された、大学卒業程度の専門的知識を持つ行政官を対象とした官職です。この官職は航空管制官(運輸省)などに充てられています。私たちはこの官職を、大学の技官へも適用することを求めたのですが、人事院は拒否しました。それは技官が、“行政官”とするには余りに多様な集団と考えられたためであったようです。実際、試験を受けずに採用されている人が多い(任用資格の多様性)ことなどは、大学の特性ということからすれば当たり前に見えても、他の官庁から見れば奇異に映るものでしょう。また大学の技官は指揮命令系統、責任の所在が不明確で、業務内容が多岐にわたります。これも教育研究の現場からは当たり前でも、行政官としては失格でしょう。私たちも「専行職」が大学の技官の実態とぴったりマッチするものとは考えていません。しかし私たちが以前要求していた「専門技術職」という官職の実現が困難な下では、次善の策として専行職の大学の技官への適用を求めるしかありません。こうした私たちの考えは、国立大学協会(以下国大協)も容れるところとなっています。
国大協は87年に「官職および組織を整えて処遇面の改善を図」り、そして「可及的速やかに専行職へ移行できる体制の構築を急ぐ」という方策を示しました。この方策に沿って理学部でも88年から技術研修が始まり、91年4月には技官の“組織化”が行われ、私たちは「技術官」という官職を得ました。これは全国的な動きで、昨年の8月段階では、全国の大学の技術職員の8割近くが組織化されるところまで来ています。そして今年になって国大協は技官の専行職適用案を決め(6月、第96回総会)、人事院や関係機関との協議に入っています。順調にいけば、来月にも移行基準がまとまり、来年度の概算要求に載ることになります(つまり最短で、再来年の4月から移行が始まる)。
技官の専行職への移行を図るこの国大協案には積極的な面のある反面、技官を専行職適用者と非適用者に分けることによって職場の混乱を引き起こす恐れがあります。たとえば、理学部で公務員試験Ⅱ種合格(大学卒業程度対象)という基準だけを盾に線引きが行われれば、まさに“職人芸”を有する人達のほとんどが専行職に移行できないでしょう。そういうことはしてほしくないし、またそうなったときに発生するであろう“冷たい戦争”は、人間的な暖かいものであるべき教育研究の場を荒んだものにしてしまいます。私たち技官部会では、専行職移行に当たって、個々の技術職員の資格や学歴で判断するのではなく、教育研究の技術的分野を分担する専門的集団として評価し、全員を移行させるよう要求しています。
現在、本部の技官部会では総長あての署名活動を行っています。その中では教室系技術職員の技術的業務を行っているものを専行職へ全員移行(1級在職者(高卒新規採用程度)、医療業務の者を除く)させることや、検討委員会の設置を求めています。先般、東大理学部では、研究科長(学部長)が交渉の席で、専行職移行問題について職組の提言に同感の旨、表明されました(9月18日)。永年にわたる運動ですがついに山場はこの秋。私たち理学部の技官部会も、11月には学部長や事務長・人事掛長とこの問題で懇談・折衝の場を持ちたいと考えているところです。みなさんの理解と支援を期待します。