いちょう 97-8[97.09.25]
なおこの記事についての訂正があります(いちょう 97-9[97.10.16]):
東大の事務組織化案の記事で、『概算要求』としてある部分は誤りです。ただの『要求』として、読んでください。 東大からの情報によると、こうした事務の組織化は、概算要求事項ではなく、学内措置として可能であるようです。

すでにお伝えした(No. 97-3。8月6日発行)ように、東大の理学部では、来年4月の実施を目指して、教室事務の組織化案をまとめ、来年度の概算要求に載せました。 「いちょう」では、7月の東大理学部教授会に提出・承認された、「教室系事務組織検討委員会」の報告書(以下「報告」)を入手できましたので、今回の東大の組織化案の大筋を紹介します。

東大理学部の教室系事務組織化案について

目指すもの ――― 事務の効率化と待遇改善

「報告」は、①業務の著しい増加とその一方での定員削減、そして②5級職での頭打ちなど教室系事務職員の待遇の悪さを上げ、 「各専攻に分散している教室系事務を、それぞれの業務毎に系統的処理が可能な態勢に組織化」することが必要で、またこれは、「非常勤職員に依存する体質からの脱却」でもあり、 「教室系職員の上級職への昇級等の待遇改善に資する」としています。

"当面"は何も変わらない

このような「組織化」については、各専攻・教室からの反発が予想されるところです。「報告」では、業務内容・執行方法、人事について「各専攻長および学科長の承認」の下で事務長が統べ、予算については「専攻長の指示の下に」行うことになっており、教員にも受け入れやすいものとなっています。

急進的な待遇改善策、そして事務と図書の分離

こうした教室事務の組織化は、全国的にもいろいろ検討されてきたところ(京大では工学部が実施)ですが、今回の東大の案で注目されるのは、待遇の改善と、教室事務と図書の分離(≒「系統的処理が可能な態勢」)でしょう。「事務検討委報告」案によれば「研究協力担当」の事務長補佐の下に、研究科を5つにくくって、それぞれに「掛長」、そしてその下に「主任」というラインが("ヒラ"はいない!)引かれます。この一方、図書については、図書担当の事務担当者(総務担当の事務長補佐が擬されている)の下に、「図書主任」、そして研究科に「図書掛長」(この下に「掛員」が配置)というラインです。

事務: 事務長 ―― 事務長補佐 ―― 各専攻掛長 ―― 主任

図書: 事務長 ―― 事務長補佐 ―― 図書主任 ―― 各図書掛長 ―― 掛員

こうした案の当否、実現可能性については、いろいろ意見のある所(われらの木村事務長は、ノーコメントとのこと)でしょう。現に、今回の東大理学部の案の、図書の部分は概算要求に間に合わなかったようです。

彼我の温度差

東大の教室系事務の組織化は、一昨年あたりから、事務サイドが主導する形で検討が加速され、組合側とも折衝を繰り返していました。それが、教授会レベルでの検討課題となり、この1月から東大理学部の教室系事務組織検討委員会で、5回にわたって審議され、今回の概算要求にまで繋がりました。また、OA化の推進についても、近く実務的な委員会が発足するようです。それに比べ、京大では5年ほど前の「事務改善懇談会」以来、めだった動きもなく、彼我の"温度差"は歴然としているようです。


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