2022.11
吉村洋介
化学実験 資料編

種々の物質の許容濃度

学生実験で有機溶媒など種々の薬品への暴露(薬品に触れたり、蒸気を吸ったりすること)は大きな問題です。 けれども何がどれほど有害かについて、必ずしもよく知られていないケースも散見します (たとえばヘキサンの有害さは、 見過ごされがちです)。 ここでは労働環境における種々の物質の暴露許容濃度(OEL。Occupational Exposure Limit)に関する産業衛生学会の 2022 年度勧告値 (産業衛生学雑誌, 64, 253 (2022))から、 学生実験でも参考になると思われる、労働現場での許容濃度 (1 日 8 時間、週40時間程度、有害物質に曝露される場合に、平均曝露濃度(表中 * を付してあるのは上限値)がこの数値以下であれば、 ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度)を紹介しておきます。 あくまで蒸気を吸入することが想定されており、ppm は体積分率(モル分率)表示における百万分率です。 直接手に触れること(経皮的暴露)などは想定されていません。

表 1.種々の物質の許容濃度(産業衛生学会 2022)
物質名化学式ppmmg/m3
アセトアルデヒドCH3CHO10*18*
酢酸CH3COOH1025
アセトンCH3COCH3200475
アクリルアミドCH2=CHCONH2-0.1
アンモニアNH32517
ベンゼンC6H61†
臭素Br20.10.65
二酸化炭素CO25,0009,000
二硫化炭素CS213.13
一酸化炭素CO5057
四塩化炭素CCl4531
クロロホルムCHCl3314.7
シクロヘキサンC6H12150520
1,1-ジクロロエタンCl2CHCH3100400
1,2-ジクロロエタンClCH2CH2Cl1040
ジクロロメタンCH2Cl250173
100*347*
1,4-ジオキサンC4H8O213.6
酢酸エチルCH3COOC2H5200720
ジエチルエーテル(C2H5)2O4001,200
ホルムアルデヒドHCHO0.10.12
0.2*0.24*
ヘプタンCH3(CH2)5CH3200820
ヘキサンCH3(CH2)4CH340140
塩化水素HCl2*3.0*
シアン化水素HCN55.5
2-プロパノールCH3CH(OH)CH3400*980*
メタノールCH3OH200260
酢酸メチルCH3COOCH3200610
メチルイソブチルケトンCH3COCH2CH(CH3)250205
オクタンCH3(CH2)6CH33001,400
ペンタンCH3(CH2)3CH3300880
フェノールC6H5OH519
テトラヒドロフランC4H8O50148
トルエンC6H5CH350188
1,1,1-トリクロロエタンCl3CCH32001,090
トリクロロエチレンCl2C=CHCl25135
キシレンC6H4(CH3)250217
*この値以下に保たないといけない(OEL-Ceiling。OEL-C)。他の数値は平均値 OEL-M。
† 発ガン性。リスク0.001の値。

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