2021.2
吉村洋介
化学実験 予習チェック

4. 無機化合物の合成と分析

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鉄化合物の合成

〇96 %硫酸の濃度は、何 mol/Lに相当するか? また、有効酸素量11%の過炭酸ナトリウム6 gには過酸化水素が 何 mmol含まれているか。

96 %硫酸の濃度は 18.0 mol/L(資料編V-10, 11参照)。
有効酸素量11 %の過炭酸ナトリウム6 gから酸素は
6 g × 0.11/(32.0 g mol-1) = 0.0206 mol
発生するので、過酸化水素は
0.0206 mol × 2 = 0.0412 mol = 41 mmol
含まれている。
なお過炭酸ナトリウムの化学式 Na2CO3·(3/2)H2O2 から考えると、 有効酸素量11 %は、過炭酸ナトリウムの含有量 (0.11 /32.0) × (4/3) ×157.0 = 72 % に相当する。

〇実験テキストに従い、原料鉄溶液の半量にシュウ酸二水和物10 gを加えて溶解した後、 トリスオキサラト鉄(III)酸カリウムを得るには、8 mol/L水酸化カリウム溶液を何 mL程度加えればよいか?

過酸化水素溶液(過炭酸ナトリウム 6 g(40 mmol)と硫酸 90 mmol で調製)と 硫酸鉄(II)(FeSO4·7H2O、式量278.01)14 g(50 mmol)とで、 原料鉄溶液は調製されている。 ここには硫酸ナトリウムと硫酸鉄(III) 以外に、 硫酸が 25 mmol 過剰に入っている勘定になる。
原料鉄溶液の半量には、Fe3+と硫酸がそれぞれ 25 mmol ずつ入っていて、 ここにシュウ酸 10 g(79 mmol)を加えたわけだから、 中和するには、8 mol/L 水酸化カリウムが
2 × (25 + 79) mmol / (8 mol/L)= 26 mL
必要になる(pH が低いと鉄シュウ酸錯体が分解することに注意)。

鉄化合物の分析

〇テキストに記載されている鉄シュウ酸錯体と過マンガン酸カリウムの反応の化学反応方程式:
__ KMnO4 + __K3[Fe(C2O4)3] + ___H2SO4 → ___MnSO4 + ___K2SO4 + ___Fe2(SO4)3 + ___CO2 + ___H2O
の量論係数を定めよ。
またこの通りに反応が進行するとして、テキストどおりに溶液を調製して、 鉄シュウ酸錯体の溶液10 mL を滴定する際に必要な過マンガン酸カリウム溶液の量は何 mLになるか。

12 KMnO4 + 10 K3[Fe(C2O4)3] + 48 H2SO4 → 12 MnSO4 + 21 K2SO4 + 5 Fe2(SO4)3 + 60 CO2 + 48 H2O
過マンガン酸カリウム溶液の濃度 [KMnO4] は (0.15 g/(158 g mol-1))/0.1 L = 9.5 mmol/L、 鉄シュウ酸錯体溶液の濃度 [FeOx3] は (0.5 g/(491 g mol-1)) / 0.1 L= 10 mmol/L であり、 反応方程式から次式が成立する:
[KMnO4] ×v(KMnO4)/12 = [FeOx3]×10 mL/10
ここから v(KMnO4) = 12.6 mL。

〇テキストに従って行った次の実験のデータから、鉄ミョウバン中の鉄の質量百分率を求めよ。 鉄ミョウバン中の鉄はすべてFe(III)として存在しているとする。

はかり取ったヨウ素酸カリウム0.2213 g、鉄ミョウバン2.0052 g。 空滴定に要したヨウ素酸カリウム溶液量8.55 mL、逆滴定に要したヨウ素酸カリウム溶液量1.90 mL。

アスコルビン酸 H2Aがデヒドロアスコルビン酸Aになるとすると、起きる反応は次の2つ:
3H2A + KIO3 → 3A + KI + 3H2O
H2A + 2Fe3+ → A + 2Fe2+ + 2 H+
Aに注目して逆滴定の量論を整理すると
(1/(1/3))[KIO3] × (8.55 mL - 1.90 mL) = (1/2)[Fe3+] × 10 mL
ここで [KIO3] = (0.2213/(214.00 g mol-1))/0.1 L = 10.341 mmol L-1
だから [Fe3+] = 41.26 mmol L-1
鉄の質量分率は
55.85 g mol-1 [Fe3+] × 0.1 L /2.0052 g = 0.1149 = 11.49 %


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