2021.3
吉村洋介
化学実験 予習チェック

8. 光吸収を用いた溶存化学種の定量

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次の物質の分子量を記せ:
1,10-フェナントロリン一水和物:
塩化ヒドロキシルアンモニウム:

1,10-フェナントロリン一水和物 C12H8N2·H2O:198.22
塩化ヒドロキシルアンモニウム HONH3Cl:69.49

鉄の定量

鉄標準溶液(50 μg/mL)、1,10-フェナントロリン溶液(一水和物の濃度1.1 g/L)それぞれの濃度はmol/L単位でそれぞれいくらか? またフェナントロリン溶液0.5 mL中のフェナントロリンをすべて鉄(II)錯体にするのに、 鉄標準溶液は少なくとも何 mL 必要か? 鉄(II)とフェナントロリンは1:3のモル比で錯体を作るとする。

鉄のモル質量は55.65 g/molなので、 鉄標準溶液の濃度は
10 µg/mL = 10 ×10-6 (mol/55.65)/mL = 1.8 ×10-4 mol/L = 0.18 mmol/L
フェナントロリン溶液の濃度は、 1.1 g/L = 1.1 (mol/198.22)/L = 5.5 mmol/L
鉄とフェナントロリンは1:3 で錯体を作るので、 フェナントロリン溶液0.5 mLと当量反応する鉄標準溶液の体積は
(0.18 mmol/L) × v(Fe) = (5.5 mmol/L) × 0.5 mL / 3
v(Fe) = 5.1 mL

4 μg/mLの鉄を含む鉄(II)フェナントロリン錯体溶液の510 nmでの吸光度を、 光路長1 cmの光学セルで測定したところ0.80であったという。 鉄(II)フェナントロリン錯体のモル吸光係数をmol-1 L cm-1 単位で求めよ。

ランベルト-ベールの法則から A = ε c L
ε = 0.80 / [(4 μg/mL)/(55.65 g/mol)] / (1 cm) = 1.11 × 104 mol-1 L cm-1

アルミニウムの定量

テキスト記載の手法に従ってアルミニウムのオキシン塩を酢酸エチルに抽出して385 nmの吸光度を調べたところ、 ブランクの試料の吸光度は0.013、アルミニウム標準溶液(9.8 mg/L)の吸光度は0.658、 温泉水試料の吸光度は0.770だったという。 ここから元の温泉水中のアルミニウム濃度を計算すると何 mg/L になるか。

鉄の定量残液中のアルミニウム濃度は \[ c_\mrm{re} = c_\mrm{st} \frac{A - A_0}{A_{\rm st} - A_0} = 9.8~ \mrm{ mg/L}~ \frac{0.770 - 0.013}{0.658 - 0.013} = 11.5~ \mrm {mg/L} \] 鉄の定量の際に元の温泉水は1/10に希釈されているので、 元の温泉水中のアルミニウム濃度はこの10倍で 115 mg/L。

酸塩基指示薬の酸解離定数の測定(酢酸組)

BPB(ブロモフェノールブルー)の全濃度一定の条件で、590 nm における吸光度がpH 10 で 0.76、 pH 4.50 で 0.59、pH 1 で 0.00 であったという。 BPB の酸解離定数 pKI を求めよ。

十分pHの低い条件で590 nmにおける吸光度Aが0。 したがってAは BPB の塩基型Xに由来しA = k[X]とおける。
[HX] + [X] = c(= 一定)
とすると、十分pHが高い状態での吸光度 A0 は c に比例し、kcとおけば、
pH = pKa + log([X]/[HX]) = pKa + log[A/(A0 - A)]
pKa = 4.50 - log[0.59/(0.76 - 0.59)] = 3.96

酸塩基指示薬の酸解離定数の測定(トリス組)

PR(フェノールレッド)の全濃度一定の条件で、560 nm における吸光度が pH 13で 0.99、 pH 7.50 で 0.34、pH 4 で 0.00 であったという。 PR の酸解離定数を求めるよ。

十分pHの低い条件で560 nmにおける吸光度Aが0。 したがってAは PR の塩基型Xに由来しA = k[X]とおける。
[HX] + [X] = c(= 一定)
とすると、十分pHが高い状態での吸光度 A0 は c に比例し、kcとおけば、
pH = pKa + log([X]/[HX]) = pKa + log[A/(A0 - A)]
pKa = 7.50 - log[0.34/(0.99 - 0.34)] = 7.78


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