2021.2
吉村洋介
化学実験 予習チェック

6. 相間平衡・物質分離

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☆次の化学式の式量を記せ:
シクロヘキサン C6H12
トルエン C7H8
2-プロパノール C3H8O:

シクロヘキサン C6H12:84.16
トルエン C7H8:92.14
2-プロパノール C3H8O: 60.10

○1気圧におけるシクロヘキサンと2-プロパノールの共沸混合物はシクロヘキサンのモル分率が0.59とされている。 質量分率では何 %に相当するか?

w1 = M1x1/(M1x1 + M2x2) = 1/(1 + (M2x2/M1x1))
より、シクロヘキサンの質量分率
w1 = 1/(1 + 60.1 × 0.41/(84.2 × 0.59)) = 67 %

○蒸気圧の温度依存性を表現する経験式にアントワーヌ式がある。 資料編V-3の表に与えられたアントワーヌ式のパラメータを用いてトルエン、 シクロヘキサン、2-プロパノールの1気圧(= 1.01325 bar)における沸点を求め、 表中の実測値と比較せよ。

T = B/(A - log (P/bar)) - C とできるので、P = 1.01325 bar として、 表に与えられた、それぞれの物質のパラメータを代入して計算すると、
沸点はトルエン110.6 °C、シクロヘキサン80.7 °C、2-プロパノール82.2 °C。
表中の実測値と一致する。

○シクロヘキサン-トルエン系が理想溶液として振る舞い、 純シクロヘキサンの蒸気圧が温度によらず純トルエンの蒸気圧の2.4倍であると仮定する。 シクロヘキサンの質量分率0.52の混合溶液100 gを単蒸留し溶液の残量が30 gになった時、 溶液中のシクロヘキサンの質量分率を推定せよ。

レイリーの式に理想溶液近似を用いて導かれる次式 \[\ln {\frac{B_0}{B}} = \frac{1}{\alpha - 1} \ln {\frac{w_0}{w}} + \frac{\alpha}{\alpha - 1} \ln {\frac{1 - w}{1 - w_0}} \] に\(w_0 = 0.52\)、\(\alpha = 2.4\)、\(B_0/B = 100/30\)を代入し、 表計算ソフトのゴールシークを使ってw を求めると 0.266。
残量 30 g の時の溶液中のシクロヘキサンの質量分率 27 %。

○アゾベンゼンの幾何異性体の混合物をHPLCで分析し右図のようなクロマトグラムを得た(横軸は保持時間、縦軸は濃度に比例する無次元量)。 ピークの処理結果によると保持時間2.948 min、4.170 minのピークの (ピーク面積, ピーク高さ) は、 それぞれ(348472 s, 55528)、(289832 s, 39039) であった。 それぞれのピークのデータから理論段数を計算せよ (処理結果の数値は実際には有効数字2ケタ程度)。 またこの差異から、十分長い保持時間を持つ物質から得られる理論段数がどの程度になるか評価せよ。

テキストの式より 4.170 min のピークについては \[N = 2\pi \left( \frac{h t_{\rm {R}}}{A} \right)^2 = 2\pi \left( \frac{39039 \times 4.170 ~\rm{min} }{289832 ~\rm{s}} \right)^2 = 7.14 \times 10^3 \] 同様に2.948 min のピークについて理論段数を求めると 4.99 × 103
テキストに倣い \[N_i = \frac{16t_i^2}{w_0^2 + w_i^2}\] と仮定すると (\(i\)番目のピークの保持時間を\(t_i\)、ピーク幅を\(w_i\)とする)、 \(16t_i^2 = N_{\infty} w_i^2\)に注意して \[N_{\infty} = \frac{t_2^2 - t_1^2}{t_2^2 /N_2 - t_1^2 /N_1}\] より\(N_{\infty} \approx 1.25 \times 10^4\)


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