2021.2
吉村洋介
化学実験 予習チェック

3. 容量分析の初歩

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乳酸の分析

テキストに従って行った次の実験データから、市販乳酸中の総乳酸量の質量百分率を求めよ。

市販乳酸を希釈して49.9 mass%にした乳酸溶液をはかり取った重さ0.3731 g。 加水分解のため加えた水酸化ナトリウム溶液の総量18.10 mL。 はかり取った炭酸ナトリウムの重さ1.0535 g、炭酸ナトリウム溶液の滴定に要した塩酸9.90 mL、 水酸化ナトリウム溶液の滴定(空滴定)に要した塩酸9.26 mL、逆滴定に要した塩酸7.38 mL。

テキストの式に得られた実験値を代入すれば計算できるが、ここでは一歩一歩やってみよう。
溶存する市販乳酸の総乳酸の物質量 nTLA は逆滴定結果から
nTLA = cNaOH ×18.10 mL - cHCl× 7.38 mL
空滴定結果から
cHCl × 9.26 mL = cNaOH × 10.00 mL
なので
nTLA = cHCl × [(9.26/10.00)×18.10 - 7.38] mL
塩酸の標定結果から
cHCl × 9.90 mL/2 = cNa2CO3 ×10.00 mL
であり cNa2CO3 = (1.0535 g/105.99 g mol-1)/100 mL = 0.09940 mol/L なので
cHCl = 0.2008 mol/L
したがって
nTLA = 1.884 mmol
元の乳酸中の総乳酸の質量比は
90.08 g mol-1 × nTLA/(0.499×0.3731 g) = 91.1 %

☆温泉水の分析

○(キレート滴定)テキストに従って5倍希釈温泉水について行った次の実験データから、 温泉水中のカルシウム・マグネシウム合量の濃度およびカルシウム濃度(mmol/L単位)を求めよ。

はかり取ったEDTA二ナトリウム二水塩の重さ0.3643 g、EBTを指示薬とした時のEDTA滴定値4.57 mL、NNを指示薬とした時の滴定値2.15 mL

(1/5) × ([Ca] + [Mg]) × 10.00 mL = [EDTA] × 4.57 mL
(1/5) × [Ca] × 10.00 mL = [EDTA] × 2.15 mL
[EDTA] = (0.3643 g/ 372.24 g/mol)/0.1 L = 9.79 mmol/Lより
Ca+Mg 22.4 mmol/L Ca 10.5 mmol/L

○(沈殿滴定)テキストに従って5倍希釈温泉水について行った次の実験データから、温泉水中の塩化物濃度(mmol/L単位)を求めよ。 また元の温泉水中の塩化物イオンの濃度を温泉水1 kg中に含まれる物質量で表わせ (mol/kg単位で表わす。元の温泉水の密度は1.026 g cm-3とする)。

はかり取った硝酸銀の重さ1.7280 g、フルオレセインを指示薬に滴定して滴定値10.28 mL。

(1/5) × [Cl-] × 10.00 mL = [AgNO3] × 10.28 mL = ((1.7280/169.87)/100) mol/mL × 10.28 mL
[Cl-] = 0.523 mol/L = 0.523 mol/(1.026 kg) = 0.510 mol/kg

☆牛乳の分析

○テキストに従って行った次の実験データから、牛乳 100 g 中のカルシウム量(mg 単位)を求めよ。

はかり取ったEDTA二ナトリウム二水和物 0.3682 g。 EDTA 溶液の塩化亜鉛溶液の滴定値 11.08 mL。 牛乳 10.02 g をとり、カゼインを凝析・分離し、試料溶液を調製。 試料溶液10.00 mL にEDTA溶液 10.00 mL 加えた後、塩化亜鉛溶液で滴定した滴定値 8.07 mL。

11.08 × [Zn] = 10.00 × [EDTA]
10.00 × [Ca] + 8.07 × [Zn] = 10.00 × [EDTA]
より
[Ca] = 0.301 × [Zn] = 0.301 × [EDTA] /1.108
ここで [EDTA] = (0.3682 g/ 372.24 g/mol)/0.1 L = 9.891 mmol/L なので
[Ca] = 2.687 mmol/L
牛乳100 gに含まれるカルシウム量は [Ca] × 40.08 × 100 mL × (100 g/10.02 g) = 107.5 mg


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