2020.5
吉村洋介
化学実験法II 問題集 最小2乗法 解説

問 3

3.K大学の優秀な学生たちが、温度を90 °Cに保ったホットプレートスターラーの天板上に水を入れたビーカーを乗せ、 熱電対を用いて最終到達温度を調べた。下表は、ビーカーに入れた水の体積Vと最終到達温度tの27グループ分の結果である。

V/mLt /°CV/mLt /°CV/mLt /°CV/mLt /°CV/mLt /°CV/mLt /°C
407980795083507680755077
207418824079608480744078
75774077508050805077
60804780408250756576
40766077507950806575

3-1.最終到達温度 t とビーカーに入れた水の体積 V との間に、t = aV + b という関係が成立するものとして、 最小2乗法を用いて係数 a と b を定めよ。

3-2.最終到達温度 t の標準偏差が 2.0 °C であることが分かっているとする。 推定した係数 a と b の標準偏差を求めよ。

3-3.ビーカーに入れた水の体積と最終到達温度が無関係であるという主張は、 係数 a = 0 であるという主張と同じであると考えることができる。 この実験結果から、有意水準 5 %で、最終到達温度はビーカーに入れた水の体積と無関係に決まると言ってよいかどうか判定せよ。


解答例

3-1

最小2乗法の公式にデータを入れて、t = aV + b の係数の推定値は

a = -0.040 K mL-1
b = 80.28 °C

3-2

推定されるパラメーターの分散は、 測定した最終到達温度の分散 σ2 に比例し、 勾配 a については [N / (N Sxx - Sx2)] σ2、 切片 b については [Sxx / (N Sxx - Sx2)] σ2 で評価できるので、計算して

σa = 0.025 K mL-1
σb = 1.34 °C

3-3

帰無仮説として a = 0 をとれば、a は平均 0、標準偏差 σa の正規分布に従う。 |a|/σa = 1.63 < 1.96 より、有意水準5%で a = 0、 つまり使用した水の量と最終到達温度に相関がないと言えなくはない。


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