2020.5
吉村洋介
化学実験法II 問題集 最小2乗法 解説

問 4

4.表に示すのは某 K 大学の学生たち17グループが、1.0 mol/Lの塩酸とその10倍希釈液(0.10 mol/L)のpHの値を、pH計を用いて測定した結果である。

group1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
1.0 M1.18 1.20 0.81 1.09 1.09 0.93 1.20 0.92 1.15 1.30
0.10 M0.01 0.23 -0.15 0.08 0.05 -0.09 0.09 -0.13 0.25 0.12
group11121314151617
1.0 M1.17 1.10 1.02 1.30 1.01 1.06 1.09
0.10 M0.17 0.24 0.05 0.30 0.04 0.02 0.22

4-1.横軸(x)に1.0 M の pH、縦軸(y)に 0.10 M の pH をとってプロットし、 最初2乗法を用いて y = ax + b という直線に当てはめて、係数 a、b を定めよ。 また相関係数はいくらになるか。 横軸(x)に0.1 M の pH、縦軸(y)に 1.0 M の pH をとってプロットしたらどうなるか?

4-2.縦軸と横軸を入れ替えた時に得られる直線の勾配が、 逆数の関係にならないのはなぜだろうか?


解答例

4-1

横軸(x)に1.0 M の pH、縦軸(y)に 0.10 M の pH をとってプロットした結果は、 右図のようになる。 最小2乗法で y = ax + b という直線に当てはめた結果は、

a = 0.750
b = 1.029

相関係数 ρ は 0.772 となる。 縦軸、横軸を逆にして、横軸(x)に0.1 M の pHをとり、 最小2乗法で y = ax + b に当てはめた結果は、

a = 0.794
b = -0.782

となる。 相関係数は上と同じく 0.772 である。

4-2

最小2乗法で y = ax + b に当てはめて求められる勾配 a は

\[ a = \frac{N S_{xy} - S_x S_y}{N S_{xx} - S_x^2} \]

で与えられる。 一方、x, y を逆にして x = cy + d から最小2乗法で求められる勾配 c は

\[ c = \frac{N S_{xy} - S_x S_y}{N S_{yy} - S_y^2} \]

したがって a と c は

\[ a c = \frac{(N S_{xy} - S_x S_y)^2}{(N S_{xx} - S_x^2)(N S_{yy} - S_y^2)} = \rho^2 \le 1 \]

より、逆数の関係になく、両者の積は相関係数の2乗(決定係数)に等しく、一般に 1 より小さい。


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