2020.5
吉村洋介
化学実験法II 問題集 最小2乗法 解説

問 6

λ / nmABY
4300.7800.1940.227
4550.0590.3580.061
6150.1160.0270.040
6440.1080.0960.040
6620.6030.0180.152

6.【16年度試験問題から】ホウレン草からクロロフィルを抽出し、 カラムクロマトグラフィーでクロロフィルa(Chl a)とクロロフィルb(Chl b)が溶離してくる分画ごとの吸収スペクトルをとった。 表にまとめたのは、ほぼ純粋なChl aを含む分画Aとほぼ純粋なChl bを含む分画B、 そしてそのその中間の分画Yのいくつかの波長 λ における吸光度の値である。 Yの波長 λ における吸光度 Y(λ) が、Aの吸光度 A(λ) とBの吸光度 B(λ) を用いて

Y(λ) = a A(λ) + b B(λ)

と表され、各波長における吸光度の標準偏差はほぼ一定であるとし、最小2乗法の取り扱いにならって、残差2乗和

S = Σ [Y(λ) - a A(λ) - b B(λ)]2

が最も小さくなるように係数a、bを定めることを考える。ここで Σ はすべての波長データについての和を取るものとする。

6-1.Spq = Σ p(λ) q(λ) として、 a と b を SAA、SAB、SBB、SAY、SBYを用いて表せ。

6-2.表のデータを用いてaとbを求めよ。


解答例

6-1

残差2乗和の a と b についての正規方程式は

\[ \frac{\partial S}{\partial a} = 2 \sum_\lambda {[Y(λ) A(λ) - a A(λ)^2 - b B(λ) A(λ)]} = 0\\ \frac{\partial S}{\partial b} = 2 \sum_\lambda {[Y(λ) B(λ) - a A(λ) B(λ) - b B(λ)^2 ]} = 0\\ \]

より、整理すると

\[ \left( \begin{array}{cc} S_{AA} & S_{AB} \\ S_{AB} & S_{BB} \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} a\\ b \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} S_{AY}\\ S_{BY} \end{array} \right) \]

したがって

\[ \left( \begin{array}{c} a\\ b \end{array} \right) = \frac{1}{S_{AA} S_{BB} - S_{AB}^2} \left( \begin{array}{cc} S_{BB} & -S_{AB} \\ -S_{AB} & S_{AA} \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} S_{AY}\\ S_{BY} \end{array} \right) = \frac{1}{S_{AA} S_{BB} - S_{AB}^2} \left( \begin{array}{c} S_{BB} S_{AY} - S_{AB} S_{BY}\\ -S_{AB} S_{AY} + S_{AA} S_{BY} \end{array} \right) \]

6-1

実際に表の数値から計算すると

a = 0.255
b = 0.133


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