2.x と y を平均と分散が等しい独立なランダム変数で、平均を μ 分散を σ2 とする。 次の(共)分散を μ と σで表せ。
〈〈p, q〉〉 ≡ 〈p q〉 - 〈p〉 〈q〉 で、p と q の共分散。 文脈で誤解がなければ、〈〈p, q〉〉 を 〈〈pq〉〉 と表記することがある。 〈〈x, x〉〉 = 〈〈x2〉〉 = σ2。
〈〈 x + 3, x - 3 〉〉
= 〈〈 x, x 〉〉 + 〈〈 3, x 〉〉 - 〈〈 x, 3 〉〉 + 〈〈 3, 3 〉〉
= 〈〈 x, x 〉〉 = σ2
〈〈 x + y - 2μ, x + 3y 〉〉
= 〈〈 x , x 〉〉 + 〈〈 y - 2μ, x 〉〉 + 〈〈 x - 2μ, 3y 〉〉 + 〈〈 y, 3y 〉〉
= σ2 + 3σ2 = 4σ2
〈〈 x + y, x - y 〉〉
= 〈〈 x , x 〉〉 + 〈〈 y, x 〉〉 - 〈〈 y, x 〉〉 - 〈〈 y, y 〉〉
= σ2 - σ2 = 0
〈〈 xy, xy 〉〉
= 〈x2y2〉 - 〈xy〉2
= 〈x2〉 〈y2〉 - 〈x〉2〈y〉2
= (σ2 + μ2)2 - μ4
= σ4 + 2μ2σ2
分散・共分散に関わる計算を取り上げました。 ここで採用している 〈〈p, q〉〉 (≡ 〈p q〉 - 〈p〉 〈q〉)という記法は、 van Kampen が用いていてなかなか便利なのですが(N. G. van Kampen, "Stochastic processes in physics and chemistry," 3rd ed, Elsevier 2007。 初版は1981。この本には苦しめられました)、 あんまり使っている人を見かけないので、せいぜい宣伝しようと思っています。
この記法が便利なのは、あたかも普通の代数演算のようにことが進むところです。 解答例では丁寧に事を進めていますが、たとえば (3) なら
〈〈 x + y, x - y 〉〉 = 〈〈 (x + y)(x - y) 〉〉 = 〈〈 x2 - y2 〉〉 = 〈〈 x2 〉〉 - 〈〈 y2 〉〉 = 0
といった具合に、〈〈p, q〉〉 = 〈〈p q〉〉 としても、罰は当たりません。 2次までで話が済むなら、特に変数が多くなってくると、次のようにかなり省力化が図れます(x, y, z は独立で等分散とする。2乗の項以外は 0 になる)。
〈〈 x + y - z -1, x - 2y + z +3 〉〉 = 〈〈 x2 - 2y2 - z2 〉〉 = - 2σ2
ただし高次の項が入ってくると、上の問題 (4) のように単純ではなく、 「生兵法は怪我の元」となって、要注意です。