2020.4
吉村洋介
化学実験法II 問題集 統計・検定・不確かさ 解説

問 4

4.銅の含量41.2 %と書かれている黄銅(真鍮)の板がある。この板の銅の含量 x %を10人の優秀なK大学の学生が分析し、 xとしてそれぞれ以下の結果を得た:
40.3, 40.6, 41.1, 40.8, 40.5, 41.0, 41.3, 40.8, 41.0, 40.7

4-1. 学生の分析値 x の標本平均と標本標準偏差を求めよ。

4-2. 学生の分析値 x の標準偏差が 4-1 で求めた標本標準偏差に等しいとする。 黄銅の板の銅の含量を 41.2 %と見なしてよいかどうか、 正規分布を仮定して有意水準5 %で判定せよ。 また標準偏差を仮定せず t検定を用いたらどうか?


解答例

4-1

標本平均 \(\bar{x} = 40.81\)
標本標準偏差 \(s = 0.30\)

4-2

標準偏差 \(\sigma = s\) とする。 標本平均の標準偏差は標本数が 10 なので\(\sigma / \sqrt{10} = 0.095\)。 中心極限定理から標本平均は正規分布に従うと見なせ、 標準化正規分布の両側5 %点は 1.96。

\[ \frac{|\bar{x} - 41.2|}{\sigma/\sqrt{10}} = \frac{|40.81 - 41.2|}{0.095} = 4.11 > 1.96 \]

より分析値が 41.2% であるという仮説は有意水準5%で棄却される。

標準偏差 \(\sigma = s\) という仮定を置かない時、\(z = (\bar{x} - 41.2)/(s/\sqrt{10}) \) が自由度 9 の t 分布に従うことを利用する。 自由度 9 の t分布で |z| > 2.26となる確率は 5 %。

\[ \frac{|\bar{x} - 41.2|}{s/\sqrt{10}} = 4.11 > 2.26 \]

より分析値が41.2%であるという仮説は、t分布を用いた検定でも、有意水準5%で棄却される。


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