5.銅の合金中の亜鉛の組成を調べるのに、容量分析による方法と重量分析による方法がある。 優秀なK大学の学生が、ある合金サンプルを容量分析と重量分析で分析して亜鉛の質量百分率w %を求めたところ、 容量分析の測定件数 43件 でwの標本平均は 26.17 で標本標準偏差 0.83、 重量分析は測定件数 25件 で標本平均 26.32 で標本標準偏差 0.88 であったという。
5-1. 容量分析と重量分析の分析値の分散が同じと見なせるかどうかを、F 検定を用い有意水準 5 %で判定せよ。
5-2. 容量分析と重量分析の分析値の分散が等しくσ2であるとする。 容量分析と重量分析の分析値の標本平均値の差の分散が σ2 [(1/43) + (1/25)]になることを、教員に分かる程度に説明せよ。
5-3. 容量分析と重量分析の w の標本平均の差が、 有意水準5 %で有意であるかどうかを t-分布を用いて判定せよ。 容量分析と重量分析の分析値の分散は等しいとする。
下付き v で容量分析結果を、 w で重量分析結果を示すものとする。
標本分散 \(s^2\) を見ると \(s_{\rm{v}}^2 < s_{\rm{w}}^2\) なので、 \(s_{\rm{w}}^2 / s_{\rm{v}}^2\) をとると、 \(0.88^2 / 0.83^2 = 1.12\)。 \(F(25 - 1, 43 - 1; 0.025) = 1.989\) より、分散が等しいという仮説は棄却されない。
容量分析と重量分析の分析値の標本平均 \(\bar{x}\) は独立なので、
\[ \langle \langle (\bar{x}_{\rm{v}} - \bar{x}_{\rm{w}})^2 \rangle \rangle = \langle \langle \bar{x}_{\rm{v}}^2 \rangle \rangle + \langle \langle \bar{x}_{\rm{w}}^2 \rangle \rangle \]
\(N\) 個の標本の標本平均の分散は、1個の標本の分散の\(1/N\)になるので、
\[ \langle \langle \bar{x}_{\rm{v}}^2 \rangle \rangle + \langle \langle \bar{x}_{\rm{w}}^2 \rangle \rangle = \frac{\sigma^2}{43} + \frac{\sigma^2}{25} = \left(\frac{1}{43} + \frac{1}{25} \right ) \sigma^2 \]
残差2乗和は \((N - 1) s^2\) であり、これを分散 \(\sigma^2\) で割ったものは、 自由度 \(N - 1\) の χ2 分布に従う。 もし容量分析と重量分析の分散と平均が等しいなら、
\[ S = (43 - 1) s_{\rm{v}}^2 + (25 - 1) s_{\rm{w}}^2 \]
を \(\sigma^2\) で割ったものは自由度 \(43 + 25 - 2 = 66\) の χ2 分布に従う。 したがって
\[ z = \frac{\bar{x}_{\rm{v}} - \bar{x}_{\rm{w}}} {\sqrt{\frac{1}{43} + \frac{1}{25}} \sqrt{\frac{(43 - 1) s_{\rm{v}}^2 + (25 - 1) s_{\rm{w}}^2}{43 + 25 - 2}}} \]
は自由度 66 の t分布に従う。 これを計算すると \(z = 0.70\) で t(66; 0.05) = 2.00 より、 容量分析と重量分析に差がないという仮説は棄却されない。