7.溶液中の塩化物イオンを硝酸銀による滴定で定量する際、滴定終点を定めるのにMohr法とFajans法がよく用いられる。 表に示すのは、K大学の優秀な学生たちが、同じ海水希釈液中の塩化物イオンの濃度x mmol/LをMohr法とFajans法で測った結果である。
学生番号 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
Mohr | 55.7 | 55.8 | 53.1 | 54.0 | 55.2 | 52.9 | 54.7 | 54.4 | 54.2 | 53.9 |
Fajans | 52.8 | 53.5 | 53.1 | 53.9 | 53.8 | 52.9 | 53.3 | 53.0 | 52.6 | 53.0 |
学生番号 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
Mohr | 54.8 | 54.2 | 54.9 | 55.2 | 55.1 | 53.9 | 55.1 | 52.9 | 55.3 | 56.2 |
Fajans | 53.1 | 52.5 | 54.1 | 53.8 | 54.1 | 53.0 | 53.8 | 52.9 | 53.4 | 53.5 |
7-1.Mohr法 と Fajans法で決めた濃度の標本分散の比は F分布に従うと考えられる。 F分布を用いてMohr法とFajans法で分散に差異があるかどうかを有意水準5 %で判定せよ。
7-2.2つの統計集団の分散が異なる時、両者の平均の差異を統計的に厳密に扱うことは困難である。 一人一人の学生について、Mohr法とFajans法で得られた結果の差 d を取りこれに t-検定を適用してMohr法とFajans法で得られる分析値に差異があるかどうかを判定せよ (「対応のあるt-検定」あるいは「対に対するt-検定」などと呼ばれる)。
Mohr法の平均54.58、標本標準偏差0.9397、標本分散0.8830。
Fajans法の平均53.30、標本標準偏差0.4883、標本分散0.2384。
分散の比は 0.8830/0.2384 = 3.704で、F(19, 19; 0.025) = 2.526より大きく、有意水準5 %で分散が等しいという仮説は棄却される (分散の比が3.704となる有意水準は0.32%)。 Mohr法とFajans法で分散に差異がある。
各人の Mohr法とFajans法の差の平均は 1.27 でその標本標準偏差 0.842。 t 検定を用いて
\[ z = \frac{|1.27 - 0|}{0.842/\sqrt{20}} = 6.74 \]
でこれは t(19; 0.025) = 2.09 より大きく、Mohr法とFajans法で差がないという仮説は有意水準5%で棄却される。 Mohr法とFajans法で平均は一致しない。