2020.4
吉村洋介
化学実験法II 問題集 統計・検定・不確かさ 解説

問 10

10.F分布とt分布について次のことを検討せよ。

10-1.x = F(φ1, φ2; P) は F分布に従うランダム変数が x 以上の値を取る確率が P であることを示す(F分布の積率分布関数の逆関数相当)。 φ1は分子、φ1は分母の自由度に対応する。 F(φ1, φ2; P) = 1/F(φ2, φ1; P) であることを示せ。 また実際に表計算ソフト等で F(20, 30; 0.025) を計算し(EXCELであれば F.INV.RT(0.025,20,30))、 この関係が成り立っていることを確認せよ。

10-2.x = t(φ; P) は自由度 φ の t分布に従うランダム変数の絶対値が x 以上の値を取る確率が P であることを示す。 [t(φ; P)]2 = F(1, φ; P)であることを示せ。 また実際に t(20; 0.05) と F(1, 20; 0.05) の計算値を比較してこの関係が成り立っていることを確認せよ (EXCELであれば T.INV.2T(0.05,20) と F.INV.RT(0.05,1,20) を比較検討すればよい)。


解答例

10-1

自由度 φ1 の χ2 分布に従うランダム変数を v1、 自由度 φ2 の χ2 分布に従うランダム変数を v2、 とすると x = (v11) / (v22) は自由度 (φ1, φ2 ) の F 分布に従う。

さて x = F(φ1, φ2; P) の意味するところをあからさまに書いてみると

Pr[ x > F(φ1, φ2; P)] = P

ということである。 これは余事象を考えれば、次のことを意味する:

Pr[ x ≤ F(φ1, φ2; P)] = 1 - P

これは逆数をとってみると

Pr[ 1/x ≥ 1/F(φ1, φ2; P)] = 1 - P

ところで x の逆数は自由度 (φ2, φ1 ) の F 分布に従うので、 これはとりもなおさず、

F(φ2, φ1; 1 - P) = 1/F(φ1, φ2; P)

を意味している。

EXCEL で F.INV.RT(0.025,20,30) を計算すると2.19516 であり、 F.INV.RT(0.975,30,20) は0.455548 で、この逆数は2.19516 で F.INV.RT(0.025,20,30) と一致した。

10-2

標準化正規分布 N(0, 1) に従うランダム変数を w、自由度 φ の χ2 分布に従うランダム変数を v、 とすると x = w/(v / φ)1/2 は自由度 φ の t 分布に従う。 ところで w2 は、自由度 1 の χ2 分布に従うので、 x2 = w2/ (v / φ) は自由度 (1, φ) の F 分布に従う。

さて全問と同様、x = t(φ; P) の意味するところをあからさまに書いてみると

Pr[ |x| > t(φ; P)] = P

ということである。 これは2乗をとってみると

Pr[ x2 > [t(φ; P)]2] = P

先に示したように、x2 は自由度 (1, φ) の F 分布に従うので、 これはとりもなおさず、

F(1, φ P) = [t(φ; P)]2

を意味している。

EXCEL で T.INV.2T(0.05,20) を計算すると2.08596であり、 F.INV.RT(0.05,1,20) は 4.3512435 で、この平方根をとると2.08596 で T.INV.2T(0.05,20) と一致した。


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