14.濃度 cHCl の塩酸の標定を、濃度 cOx のシュウ酸溶液を標準にして、 BTBを指示薬に濃度 cNaOH の水酸化ナトリウム溶液を用いて行なった。 シュウ酸溶液、塩酸をそれぞれ容量 V の同じホールピペットを用いて採取し、 シュウ酸溶液については v1、塩酸についてはv2の滴定値を得たという。 (濃度はすべて物質量の濃度) この標定操作から得られる塩酸濃度 cHCl の誤差について、 滴定値 v1 と v2 の誤差の影響を解析した以下の文章を読み、問いに答えよ。
cHCl = イ
塩酸濃度の精確な値c°HCl からの偏差 δcHCl (= cHCl - c°HCl )は、 精確な当量点からの滴定値の偏差 δv1、 δv2 が十分小さければδcHCl = ( ∂cHCl/ ∂v1) δv1 +(∂cHCl/∂v2) δv2
より:δcHCl / cHCl = ロ δv1 + ハ δv2
この滴定操作では、溶液の色が黄色から緑になったところを終点とする。 変色が確認できた時点での滴下量を読み取るので、変色が十分鋭敏に起きるなら平均的に見て一回に滴下する容量 vX の半分だけ入れすぎてしまう。 また分散は vX2/12と評価される。 したがって滴定値の偏差が、この終点の判定にともなう偏差によるものとすれば、 計算される塩酸濃度の偏差の平均 〈 δcHCl〉 と分散 〈〈cHCl2〉〉 は次式で表わされる:〈 δcHCl〉 = ニ cHCl
〈〈 cHCl2〉〉 = ホ cHCl2
14-1.文中イ~ホに適切な式を記せ。
14-2.0.0500 mol/Lのシュウ酸溶液を標準物質にして、 上記の標定操作を行いシュウ酸については 10.10 mL、塩酸については 9.50 mL の滴定値を得たという。 一回に滴下する容量 vX = 0.030 mLとして、 上記の誤差解析に基づき、得られる塩酸濃度の精確な濃度からの偏差の平均値と標準偏差を求めよ。
14-3.用いたのが 10 mLのホールピペットで、 採取する容量の標準偏差が 0.010 mLであったとする。 このことを考慮した時、上で求めた塩酸濃度の標準偏差はどうなるか?
シュウ酸 H2Ox と塩酸の中和反応はそれぞれ
H2Ox + 2NaOH → Na2Ox + 2H2O
HCl + NaCl → NaCl + H2O
それぞれの反応の進行度を \(z_1 , z_2\) とすれば、反応が完結した時点で
\[ z_1 = V c_{\rm{Ox}} = v_1 c_{\rm{NaOH}} / 2\\ z_2 = V c_{\rm{HCl}} = v_2 c_{\rm{NaOH}} \]
したがって塩酸濃度は
\[ c_{\rm{HCl}} = \frac{v_2}{v_1} c_{\rm{Ox}} \]
滴定値の微小な変動 \(\delta v_1\)、\(\delta v_2\) に対し、 得られる塩酸濃度の変動 \(\delta c_{\rm{HCl}}\) は
\[ \frac{\delta c_{\rm{HCl}}}{c_{\rm{HCl}}} = -\frac{1}{v_1} \delta v_1 + \frac{1}{v_2} \delta v_2 \]
したがって塩酸濃度の偏差の平均と分散は
\[ \langle \delta c_{\rm{HCl}} \rangle = \left( -\frac{1}{v_1} + \frac{1}{v_2} \right) \frac {v_{\rm{X}}}{2} c_{\rm{HCl}}\\ \langle \langle c_{\rm{HCl}}^2 \rangle \rangle = \left( \frac{1}{v_1^2} + \frac{1}{v_2^2} \right) \frac{v_{\rm{X}}^2}{12} c_{\rm{HCl}}^2 \]
〈 δ cHCl 〉 = +9 × 10-6 mol/L
(〈〈 cHCl2 〉〉)1/2 = 1.2 × 10-4 mol/L
\[ \langle \langle c_{\rm{HCl}}^2 \rangle \rangle = \langle \langle c_{\rm{HCl}}^2 \rangle \rangle_0 + 2\frac{\langle \langle V^2 \rangle \rangle}{V^2} c_{\rm{HCl}}^2 \]
より
(〈〈 cHCl2 〉〉)1/2 = 1.8 × 10-4 mol/L