2020.4
吉村洋介
化学実験法II 問題集 輸送現象 解説

問 3

3.室温が20 °Cで外気の気温が -10 °C の時、部屋の窓からの放熱を考える。 窓が厚さ 6 mm で熱伝導度 1.0 W m-1 K-1のガラスの板1枚で仕切られていて、 風がなく自然対流の影響で空気との間の熱伝達率が内外ともに 2 W m-2 K-1であるとする。

3-1.窓の面積を 1.0 m2として単位時間当たりの放熱量を評価せよ。

3-2.風が吹いてガラス窓の外側の熱伝達率が30 W m-2 K-1になったとする。 単位時間当たりの放熱量はいくらになるか。

3-3.ガラス窓の外に木製の雨戸(厚さ5 mm 熱伝導度 0.2 W m-1 K-1)を取り付けた。 この雨戸とガラス窓の間には風が吹き込まず、内側の空気との熱伝達率は雨戸もガラス窓も同じく 2 W m-2 K-1であり、 雨戸の外側の熱伝達率は30 W m-2 K-1であるとする。 窓からの単位時間当たりの放熱量はいくらになるだろうか? また雨戸とガラス窓の間の空気の温度は何 °Cになるだろうか?


解答例

3-1.

ガラス窓の熱伝達率を hg、ガラス窓と外気の間の熱伝達率を hag、ガラス窓と室内の熱伝達率を hga とする。 ガラス窓の外気と触れる側の温度を TX °C、室内側の温度を TY °C とすると

J = hga (20 - TY) = hg (TY - TX) = hag (TX - (- 10))

より

J = (20 - (-10))/(hag-1 + hg-1 + hga-1)  (A)

ガラス窓の熱伝達率は hg =1.0 W m-1 K-1/6 mm = 170 W m-2 K-1 なので、これと hag = hga = 2 W m-2 K-1 を (A) 式に代入して

J = 30 W m-2

3-2.

(A) 式に hag = 30 W m-2 K-1、hga = 2 W m-2 K-1 、 hg = 170 W m-2 K-1 を代入して

J = 56 W m-2

3-3.

雨戸の熱伝達率 hs は 0.2 W m-1 K-1/5 mm = 40 W m-2 K-1。 (A) 式と同様にして、次式が成立するので

J = (20 - (-10))/(has-1 + hs-1 + hsa-1 + hag-1 + hg-1 + hga-1)  (B)

J = 19 W m-2

雨戸とガラス窓の間の空気の温度を TZ °C とすると

J = (TZ - (-10)) /(has-1 + hs-1 + hsa-1)

なので TZ °C = 0.7 °C。


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