9.試薬瓶のガラスの摺り合わせから、瓶の中に入っているヘキサンの蒸気がどの程度漏れるかを評価した次の文章を読み、問いに答えよ。
\[ \frac{\Delta P}{h} = \eta \frac{\rmd^2 u}{\rmd x^2} ~~~~ \mbox{(a)} \]
x = ±d/2 で u = 0 となるように u を決めると次のようになる\[ u = k (x^2 - d^2/4) ~~~~ \mbox{(b)} \]
ここで \(k = \Delta P / (2 \eta h)\) とおいた。 すきまの間の流体の平均流速は u = - イ であり、摺り合わせの間を通過する単位時間当たりの流量 Q は次式で与えられる:\[ Q = - \frac{\pi d r^3}{6 \eta h} \Delta P ~~~~ \mbox{(c)} \]
9-1.式(a)が成り立つことを教員 Y にもわかる程度に説明せよ。
9-2.イに適切な式を入れ、式(c)が成り立つことを示せ。
9-3.摺りの半径 r = 10 mm、高さ h = 20 mmで、摺りの間隔 d = 0.05 mmであるとする。 また試薬瓶内のヘキサンの蒸気圧は 20 kPaで一定で、空気の粘度はヘキサンの濃度によらず20 μPa sとする。
9-3a.外部の圧力は100 kPaで一定で、試薬瓶内部の圧力が室温の上昇にともなって104 kPaになったとしよう(5 °C程度の温度上昇に相当)。 ヘキサンで飽和した空気が毎分何mL漏れ出てくることになるか?これは毎分何gのヘキサンが漏れ出ることに相当するか。 またもし摺り合わせのよい試薬瓶で、摺りの間隔 d = 0.01 mmであるとすると漏れ出るヘキサンの量はどうなるか?
9-3b.空気中でのヘキサンの拡散係数を8 mm2 s-1とする。 試薬瓶の内外の圧力差がない場合、摺りの間隔 d = 0.05 mm、0.01 mmそれぞれの場合について、 拡散によってヘキサンが外部に漏れだす量は毎分何 g 程度になるか。
流れの方向を y とし、y方向の力の釣り合いを考える。 微小な体積を考えると、まさつ力 Fxy の勾配の寄与 dFxy/dx と圧力 Fyy の勾配の寄与 dFyy/dy があり、 それぞれ η d(duy/dx)/dx、ΔP/hで評価され、これが釣り合った状態で定常状態が実現されるので
η d(duy/dx)/dx = ΔP/h から(a)式が導かれる。
平均速度は
\[ \frac{1}{d} \int_{-d/2}^{d/2} {k (x^2 - d^2/4) \rmd x} = \frac{2k}{d} \left[ \frac{x^3}{3} - \frac{d^2}{4} x \right]_0^{d/2} = -\frac{1}{6}kd^2 \]
【イ】
流量Qはこれに断面積 2πrd をかけて
\[ Q = 2\pi rd \left(-\frac{1}{6} k d^2 \right) = -\frac{\pi r d k}{3} d^2 = -\frac{\pi d^3 r}{6 \eta h} \Delta P \]
\[ Q =\rm{ -\frac{\pi (0.05 × 10^{-3})^3~(10 \times 10^{-3})} {6 (20 \times 10^{-6}) (20 \times 10^{-3}} (4 \times 10^3) ~m^3~s^{-1} = 6.5 \times 10^{-6}~m^3~s^{-1} } \]
ヘキサン(MW 86)濃度は
ρ = P/RT = (20 × 103)/(8.314 × 293) mol/m3 = 8.1 mol/m3 = 8.1×86 g/m3 = 700 g/m3
したがって Qρ = 4.6 mg/s = 0.27 g/min
d = 0.01 mmであると(1/5)3になって、2.2 mg/min
\[ J = -D \frac{0 - \rho}{h} = \rm{ (8 \times 10^{-6}) \frac{700}{20 \times 10^{-3}} ~g ~m^{-2} ~s^{-1} = 0.28 ~ g ~ m^{-2}~ s^{-1} } \]
流出量はこれに断面積をかけて
2 π rd J = 2 π (10 mm × 0.05 mm) × 0.28 g m-2 s-1 = 8.8 × 10-7 g s-1 = 5.3 ×10-5 g min-1
d = 0.01 mmであると(1/5)になって、1.1 ×10-5 g min-1