13.温度 \(T_{\rm{m}}\) に保った直径 \(d\) の細長い金属線を、温度 \(T_{\rm{a}}\) 、風速 \(v\) の気流中に置いた時、 熱輻射の効果を無視すると、金属線の単位表面積あたりの放熱量 \(q\) は次式で評価されるという(Kingの式)
\[ q = \frac{k}{d} (A + B \sqrt{vd/\nu} ) (T_{\rm{m}} - T_{\rm{a}})~~~~ \mbox{(X)} \]
ここで \(k\) と \(\nu\) はそれぞれ気体の熱伝導度と動粘度であり、\(A\)、\(B\) はともにおよそ0.5程度の定数である。
13-1.式(X)はレイノルズ数 \(vd/\nu\) が1~5000程度で成立するという。 金属線の直径が 50 μmであるとすると、空気中で風速が何m/s程度の範囲で成立することになるか。 空気の熱伝導度を0.026 W m-1 K-1、動粘度を16 mm2/sであるとする。
13-2.熱線式の風速計は式(X)に基づき、抵抗線に電流を流して発生する熱量と、抵抗線と気体の温度差をモニターすることで風速を測定する。 電気抵抗が1 mあたり40 Ω の直径50 µmの抵抗線を用い、抵抗線温度 \(T_{\rm{m}}\) を80 °Cで一定になるように抵抗線に流す電流値を制御したとしよう。 風速10 m/s、20 °Cの気流中に置いたとき、電流をどれぐらい流す必要があるか。 また風速1 m/sの時はどうか。かんたんのため \(A = B = 0.5\) とする。
レイノルズ数は
v d /ν = v (50 × 10-6 m)/(16 × 10-6 m2/s) = v × (3.1 s/m) = 1 ~ 5000
より v = (0.3 ~ 1600) m/s
電流 \(I\) を流した時、定常的な熱流速\(q\) は
\[ q = \frac{R I^2}{\pi d L} = ({\rm{40 ~\Omega / m}})~ \frac{I^2}{\pi d} \]
これが (X) 式で評価される放熱量と釣り合うので
\[ q = \frac{\rm{0.026~ W~ m^{-1}~ K^{-1}}}{d} \left( 0.5 + 0.5 ~\sqrt{v} \rm{\sqrt{50~\mu m/16~mm^{-2}~s^{-1}}} \right) (80 - 20)~ rm{K}\\ = \frac{0.026~\rm{W~m^{-1}}}{d} 0.5 \left(1 + 1.77\sqrt{v/\rm{m~s^{-1}}} \right) \times 60 = ({\rm{40 ~\Omega / m}})~ \frac{I^2}{\pi d} \]
整理すると
\[ (I / \rm{A})^2 = 0.061 (1 + 1.77\sqrt{v / \rm{m~s^{-1}}} ) \]
したがって
v = 1 m/s なら I = 0.41 A
v = 10 m/s なら I = 0.63 A