15.【14年度試験問題から】以下の文章を読み問いに答えよ。
\[ S_v = 14 \sqrt{\frac{\Delta P}{\eta u L} \frac{\epsilon^3}{(1 - \epsilon)^2}} \]
これが Kozeny-Carman の式とされているのだが、コピペの教師 Y がプリントに書いていた式と係数が違っている。 不審に思った N 君が大先輩の Q 先生に尋ねたところ、 Q 先生は「Y君は若いからね。ぼくらは記号の書体なんて気にしなかったし、CGS単位系で圧力差だけはmmH2O。 それにどうせ有効数字2ケタ程度の話だから」と仰った。 Q先生の話を手掛かりに、N君は次のように考えた:この公式中の \(S_v\) や \(L\) などは物理量ではなく数値なのだろう。 もしすべてがCGS単位系で統一されておれば、余分な係数は出てこないはずだ。 Q先生の話を信じれば圧力が mmH2O とのことだが、これは高さ 1 mm の水柱のおよぼす圧力だから、 CGS単位系に直せば、重力加速度 9.8 m s-2 で水の密度を 1.00 g cm-3 として、
1 mmH2O = イ dyn/cm2
だからCGS単位で表した圧力差 ΔPCGS dyn cm-2を使うと 、上の公式中の ΔP を次のように置き換えればよい
ΔP = ロ ΔPCGS
しかしこれではコピペの Y の書いていた式と合わない。 Q先生は ハ をmmH2O と思い違いしておられたのだろう。 そう考えればつじつまが合う。15-1.文中の イ~ハに当てはまる適切な数字・数式あるいは単位記号を記せ。
15-2.空隙率が 0.58 の炭酸カルシウムの粉末を断面積 0.80 cm2 のガラス管に高さ12 cmになるように詰め空気を流した。 水を入れたU字管で、粉末層にかかる気圧差を測定したところ 8.0 cmH2Oで、 空気は毎分24 cm3 の速度で流れた。 この炭酸カルシウムの粉末が直径 \(d\) の球形粒子からなるとすると \(d\) は何 µm だろう? また単位質量あたりの表面積を評価せよ。この温度での空気の粘度を0.019 mPa s、炭酸カルシウムの結晶の密度を2.7 g cm-3とする(1 P(ポアズ) = 0.1 Pa s、\(d = 6/S_v\)で評価されることに注意せよ)。
CGS系の圧力の単位としてbarye(バリ)、単位記号b(ba、Baとも。1 b = 1 dyn cm-2)があるが 、bar(= 0.1 MPa)と紛らわしくあまり(ほとんど)使用されない。
【イ】
CGS 単位で mmH2O を表すと、密度 ρ = 1.00 g cm-3、1 mm = 0.1 cm だから
1 mmH2O = ρgh = 1.00 × 980 × 0.1 dyn cm-2 = 98 dyn cm-2
【ロ】
ΔP mmH2O = ΔPCGS dyn cm-2
より
ΔP = (1/98) ΔPCGS
【ハ】
CGS で表した時の数値を代入すると
\[ \rm{ S_v = 14 \sqrt{\frac{\Delta P_{\rm{CGS}}}{98 \eta u L} \frac{\epsilon^3}{(1 - \epsilon)^2}} = \sqrt{\frac{\Delta P_{\rm{CGS}}}{0.5 \eta u L} \frac{\epsilon^3}{(1 - \epsilon)^2}} } \]
Y がコピペで書いていた式
\[ S_v = \sqrt{\frac{\Delta P}{5 \eta u L} \frac{\epsilon^3}{(1 - \epsilon)^2}} \]
と一致させるには
ΔP = (1/980) ΔPCGS
つまり 10 mmH2O = 1 cmH2O を単位としていたとすればつじつまが合う。
問題にしている流速が、単位断面積あたりの粉体の存在しない層の気体のものなので 24/(60 ×0.80) cm/s であることに注意して、 与えられた数値を代入すると
\[ S_v = 14 \sqrt{\frac{8.0}{0.019 \times 10^{-2} \times [24/(60 \times 0.80)] \times 12} \frac{0.58^3}{(1 - 0.58)^2}}\\ = 1233 \]
単位体積当たりの表面積 Sv は、1230 cm-1。 粒子が球形で同じサイズであるとすれば、その直径は
6/Sv = 49 µm
単位質量当たりの表面積は
Sv/ ρ = 1230 cm-1/ 2.7 g cm-3 = 460 cm2 g-1 = 0.046 m2 g-1