2020.4
吉村洋介
化学実験法II 問題集 輸送現象 解説

問 16

16.断面積 1 cm2のガラス管に、直径0.70 mmの球形粒子からなるイオン交換樹脂を10 cmの高さ分だけ詰めて、水を流下させる。 水はちょうどイオン交換樹脂が浸った状態にしているものとする。

16-1.外部から圧力を加えず、重力で水を流下させるとき、イオン交換樹脂カラムに働く圧力勾配 ΔP/L は何 Pa/m と評価されるか?

16-2.詰めたイオン交換樹脂は十分水を切った状態で 6.5 g、それに十分水を浸した状態で 10.5 gであったという。 空隙率 ε はいくらか?

16-3.水の粘度を1.0 mPa sとし、コゼニー-カルマンの式に基づいて、水がどの程度の速度で流下するか評価せよ。

16-4.イオン交換樹脂が水酸化物イオンとイオン交換して膨潤し直径が 0.72 mmになったとする。 イオン交換樹脂を詰めた高さが変化しないとすると、この状態で水を流した時の流速は前問に比してどうなるか。


16-1.

ΔP / L = ρ g = 1000 × 9.8 Pa/m = 9.8 kPa/m

16-2.

空隙の体積は、水の密度を 1.00 g cm-3 として (10.5 - 6.5) / 1.00 g cm-3 で評価できるから

ε = (10.5 - 6.5)/10 = 0.40

16-3.

コゼニー-カルマンの式に代入して

\[ u = \frac{d^2}{180} \frac{\epsilon^3}{(1 - \epsilon)^2} \frac{\Delta P}{\eta L} \rm{= 4.7 \times ~10^{-3} m/s} \]

単位時間あたりに流下する体積は、流速に断面積をかけて

Q = 1 cm2 u = 0.47 cm3/s = 28 cm3/min

16-4.

粒子が膨潤しても全体の容積は変化せず、空隙率が減少して ε' になったものとする。

ε' = (10 - 6.0× (0.72/0.70)3)/10 = 0.347

コゼニー-カルマンの式から流速は

\[ u’ = \frac{0.72^2}{0.70^2} \frac{\epsilon'^3 (1 - \epsilon)^2}{\epsilon^3 (1 - \epsilon')^2} u = 0.58 u = \rm{2.7 \times 10^3 ~m/s} \]

単位時間あたりに流下する体積は、

Q’ = 0.27 cm3/s = 16 cm3/min


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