茶葉からカフェインを抽出分離・昇華精製し、赤外スペクトルを用いて同定する。
アルカロイドの一種。チョコレートに含まれるテオブロミンはカフェインの類縁化合物。 MW 194.19、m. p. 227-228 °C (無水)。180 °Cぐらいから昇華が著しくなる。 熱水によく溶け(~50 %)、室温付近でも水に 2 %ぐらいまで溶ける。
酸性で過酸化水素と反応させ乾固すると橙色になり、アンモニアを作用させると赤くなる(ムレキシド反応)。 温度を上げ過ぎると分解が進んで、呈色がはっきり見られなくなる。
赤外線IRスペクトルはおよそ波長 λ が2 µm ~ 20 µm の領域の電磁波 (波数(= 1/λ)500 cm-1 ~ 5000 cm-1程度)の吸収スペクトル。。 主に分子の振動状態を反映したスペクトルが得られる。分極の大きな結合の振動ほど(O-HやC-O)強い吸収を示す。 有機化学では官能基の存在の検出、物質の同定などに用いられる。
有機化合物の赤外吸収スペクトルの測定には、以前はもっぱら透過法が用いられたが、 近年では反射法(ATR法。減衰全反射法)が主流となっており、今回使用するFT-IR装置Cary 630でもATR法を用いる。 ATR法では透過法に比して、低波数側の吸収が強調され、強く鋭い吸収については一般に低波数側にピークが出るので、 透過法で得られた結果との比較には注意が必要である。
図2A1. 純度の高いカフェインの赤外吸収スペクトル(Cary 630 ATR法) |
カフェインの抽出・精製の実験は、 よく大学初年級の化学実験で取り上げられています。 教科書で習った抽出や昇華操作で、 ふだん飲んでいるお茶から、 「化学物質」のカフェインの結晶が得られるのは、 ちょっと感動です。 入門化学実験でも、出発の時点から、課題の中に盛り込んでいました。
カフェインの抽出溶剤には、 安全性を考えると酢酸エチルを使う方が望ましいかもしれません。 けれども分配係数が小さくて回収率が低く、 沸点が高いので、 ジクロロメタンを採用しています (最初は3回生実験の余り物のクロロホルムを使いました)。 なおジクロロメタンは排水基準が厳しく設定されているので(クロムやニッケルより1ケタ厳しい 0.2 ppm)、 廃液の扱いには注意です。
実験の様子や、ちょっと詳しい話は下記サイトを見てください: