「液体構造」というのは、手触りのいい、何かわかった気にさせる言葉です。 そうであるがゆえに、うまく説明できないことがあると、さっそくに「液体構造」が動員され、説明したことにしてしまうことが、しばしば行われてきたように思います。 今日では、「動的構造」という言葉にもよく出会うようになりました。 しかし「液体構造」という言葉が、情緒的に多用されるものの、その「構造」の何が、 どう注目する物性と関っているのか、といった「構造」の内実に踏み込んだ検討が、十分になされているとは思えません。 今回、液体構造と正面から向き合って、その解明に努めておられる三沢先生の話、 また金属液体の構造と物性の関わりの確かな見通しの上に、仕事を進めておられる八尾先生の話を聞いて、 われわれの当面する問題の広がりと深さを、つくづくと教えらました。 今後、こうした問題と、正面から取り組む仕事の現れてくることを、期待したいと思います。
なお今回の記録集の作成にあたっては、当初、それぞれの先生のスタイル、三沢先生の基本的な問題を一つもおろそかにすまいという細心さ、 八尾先生のぐいぐいと金属液体をスケッチしていく力強さ、といったものを何とか紙の上で再現しようとしたのですが、 とうていできないことと思い知らされました。 その結果、全体として不統一な点が多々あると思います。 また、原稿は先生方に、目を通していただいていますが、元原稿を作ったのが、 せいぜい門前の小僧といった格の吉村ですので、とんでもないまちがいがあるかもしれません。 その分には、どうぞご容赦のほど願います。
京都高圧物理化学フォーラムと銘打って、液体関係の高圧物理化学の集まりを持つようになって、5年たちました。 今回のフォーラムは、いささか理論的な色彩が濃く、新年早々でもあり、 世話人としては、閑古鳥が鳴くことを心配したのですが、高圧関係者以外の参加もあって、30人近くの人の参加を得て、盛会となりました。 高圧物理化学という分野は、他の分野との緊張を失った時、漫然と圧力をかけるだけの物理化学になってしまう危険を持っていると思います。 今後とも、内に閉じず、他の分野に開かれた形での、フォーラムの発展を期待しています。
最後に、会場の設定、フォーラムの進行が拙く、参加者の皆さんには、いろいろご不満があったことと思います。 参加されたことに厚く感謝するとともに、ご寛恕のほど願います。