いちょう No. 99-14 99.11.25.

地球物理の森二朗さんが亡くなられて、もう1年が経とうとしています。森さんは昨年11月20日午前10時ごろ、山科の花山天文台で宿直中に脳出血で倒れているのを発見され、そのまま意識の回復することなく昨年11月29日朝7時16分亡くなられました。今回のいちょうには、森さんの長年の伴侶であった森豊子さんから、一文をいただいています。

森さんの同僚・知人からの一文はこちら


夫の遺志

森 豊子

だんだん寒くなり冬の足音が聞こえてきました。去年もこんな風に寒くなり、更に急激な寒波が来てその中で夫は倒れ、逝ってしまいました。未だに夫の死を受け入れられず悔やみ悩み続けています。でも落ち込んではいられず生きなければならず、無我夢中の一年でした。

この間、京大職組や理学部支部の皆さまにはいろいろとお世話になり、暖かいご支援を頂き本当に有り難うございました。理学部支部から大学に何度も働きかけて頂いたお陰で、夫の公務災害の手続きもようやく本格的に着手して頂ける運びになりました。

更に今後は支部でワーキンググループを作って取り組んで頂けると聞き、心強い限りです。実際京大の内情をよく知らない私一人では何も出来ません。皆さまのお力を頼りにしています。この機会にこれ迄の経過の概略を皆さまにご報告させて頂きます。

1月下旬に教室主任の広田先生から、下表の申請書類のうち下線の六項を提出するようご指示があり、その後のひと月余は一切の雑念を捨てて書類の作成に全力を注ぎました。 

心・血管疾患及び脳血管疾患等業務関連疾患の簡易認定調査票 
別紙1……地球物理学教室組織状況表 
別紙2……人事記録 
別紙3……災害発生時の状況(入院状況等を含む) 
別紙4……災害発生現場見取図、地図、写真 
別紙5……被災職員又は家族の申立書 
別紙6……被災職員の属する組織全体の業務状況及び分担表 
別紙7……被災職員の通常の日常業務内容と被災前の業務内容の詳細と比較 
別紙8……被災前日から直前までの業務従事状況及び症状況の詳細 
別紙9……発症前1週間の勤務状況の詳細 
別紙10……発症前1ヶ月間の勤務状況 
別紙11……発症時の主治医の意見書、診療録(カルテ等) 
別紙12……発症前の本人の愁訴及び前駆症状等 
別紙13……定期健康診断の記録、指導区分及び事後措置等の内容 
別紙14……本人の素因、基礎疾患、既存疾患の有無及びその内容 
別紙15……定期健康診断にかかる主治医の意見書、診療録 
別紙16……発症前1週間の生活状況及び発症前1ヶ月間の生活状況 
別紙17……家族状況、家族歴 
別紙18……死亡診断書 
別紙19……出勤簿 
別紙20……休暇簿 
別紙21……超過勤務命令簿 
別紙22……超過勤務等時間報告書 
「主治医の意見書」を書いて貰うため、日赤病院へ何度も行き、過去に夫が受診した医師にも確認を頂きました。「遺族の申立書」作成は一番苦労しました。一人勤務が多かった夫の具体的な職務内容を知る人は少なく、まして最後の年の苦労や倒れた事との関係を文部省や人事院等に理解してもらうことは至難の技と思われました。苦慮の末昭和36年に夫が京大に勤務し始めてから倒れる迄、家族が見てきた夫の勤務状況を思い起こし長々と書き綴りましたが、京都大学についての正確な知識のない私の思い違いも多く、岩嶋先生と木田先生が何度もご検討下さり細かい点まで指摘を頂き、又組合本部の助言も頂いて何度も書く直し、3月15日全書類を広田先生に提出することが出来ました。

この苦しく心血を注ぐ作業の中で、私は初めて夫の遺志を感じることが出来ました。夫は生前、組合活動の中でも特に、行二職である技官の立場の弱さを訴えたいと願っていました。その夫の公務災害認定にむけて、夫と共にがんばろうと決意を新たにしました。

又この間、改めて京都大学という職場の難しさや、研究者、職員ともに過酷な状況の中で働いておられる事も分かってきました。また京大全体に、健康管理や労働安全衛生面での立ち遅れや、不十分な状況があるのではないかという事も感じました。

今後は、大学との関係を大切にしながら、労災・公災・過労死対策の団体や学習会等にも参加して学習し、連帯しながらがんばっていきたいと思います。同志社大学の千田先生が、過労死・過労自殺を考えるセミナーの呼びかけ文の中で、家族や同僚が倒れたときに「過労死ではないか?」という疑問から始まり、「やっぱり、過労死としか思えない」という確信をもち、更に世間の多くの方々の確信につなげていく運動の道筋が大切だと言っておられます。これは森の公務災害認定の運動の課題であると思います。今後は更に多くの方に森の問題を知って頂き一緒に考えて頂く中で、京大で働く人々の命と健康を守る課題が明確になり、安心して働ける職場作りに繋がればと願っています。 一層のご支援をお願いいたします。


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