2022.11
吉村洋介
化学実験 資料編

ろ紙の種類と性質

ろ過(濾過・漉過)の基本的なところについては、2回生の実験でも取り上げています。 ろ紙は化学実験では身近なものですが、意外にその内実に触れる機会がないようです。 ろ紙の種類と特徴を表 1 にまとめておきます (ADVANTEC 東洋濾紙製のものです)。

表 1.ろ紙の種類と特徴 (ADVANTEC 東洋濾紙 による。一部改変)
区分品番厚さ/mm ろ過速度*/mL s-1 cm-2灰分/%保持粒子径/μm
定性分析用
一般定性用No.10.200.220.16
標準定性用No.20.260.130.15
半硬質定性用No.1310.250.040.13
硬質定性用No.4A0.170.010.0251
定量分析用
簡易定量用No.30.240.080.015
迅速定量用No.5A 0.220.200.017
一般定量用No.5B0.220.050.014
硫酸バリウム用No.5C0.220.020.011
標準定量用No.60.190.030.013
高級定量用No.70.170.050.014
* 圧力を 10 cmH2Oかけた時の目安の値。 元のカタログには、JIS P3801 にならって、 10 cmH2O の圧力で一定量の水を透過するのに要する時間(濾水時間)の形で表示されています。

ここで示した品番は ADVANTEC 東洋濾紙のものですが、 JIS P3801「ろ紙(化学分析用)」に規定される種別とは、 No. 1(1種)、No. 2(2種)、No. 131(3種)、No. 4A(4種)、No. 5A(5種A)、No. 5B(5種B)、No. 5C(5種C)、No. 6(6種)という対応になっています (カッコ内がJIS P3801に規定されたろ紙種別)。 No. 7 はかつて「無灰ろ紙」と呼ばれ、灰分の非常に少ないものです。 区分の欄の表示は以前のカタログにあったものを、分かりやすいのでそのまま残してあります。 紙の強度(乾燥時と湿潤時)の規定は省略しました(No. 131 の破裂強さに疑問)。

なお沈殿粒子径についてですが、以前は「沈殿保持性」として粗大、中、微細などという表記になっていました。 JIS P3801 では、水酸化鉄、硫酸鉛、硫酸バリウムが、それぞれの代表として登場し、 「沈殿のろ液が透明となること」という規定になっています。 こうした ”体感的” な規定は廃れていくんでしょうが、老人は何か寂しい気がしてしまうんですよね・・・


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