ろ過(濾過・漉過)の基本的なところについては、2回生の実験でも取り上げています。 ろ紙は化学実験では身近なものですが、意外にその内実に触れる機会がないようです。 ろ紙の種類と特徴を表 1 にまとめておきます (ADVANTEC 東洋濾紙製のものです)。
区分 | 品番 | 厚さ/mm | ろ過速度*/mL s-1 cm-2 | 灰分/% | 保持粒子径/μm | |
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定性分析用 | ||||||
一般定性用 | No.1 | 0.20 | 0.22 | 0.1 | 6 | |
標準定性用 | No.2 | 0.26 | 0.13 | 0.1 | 5 | |
半硬質定性用 | No.131 | 0.25 | 0.04 | 0.1 | 3 | |
硬質定性用 | No.4A | 0.17 | 0.01 | 0.025 | 1 | |
定量分析用 | ||||||
簡易定量用 | No.3 | 0.24 | 0.08 | 0.01 | 5 | |
迅速定量用 | No.5A | 0.22 | 0.20 | 0.01 | 7 | |
一般定量用 | No.5B | 0.22 | 0.05 | 0.01 | 4 | |
硫酸バリウム用 | No.5C | 0.22 | 0.02 | 0.01 | 1 | |
標準定量用 | No.6 | 0.19 | 0.03 | 0.01 | 3 | |
高級定量用 | No.7 | 0.17 | 0.05 | 0.01 | 4 |
ここで示した品番は ADVANTEC 東洋濾紙のものですが、 JIS P3801「ろ紙(化学分析用)」に規定される種別とは、 No. 1(1種)、No. 2(2種)、No. 131(3種)、No. 4A(4種)、No. 5A(5種A)、No. 5B(5種B)、No. 5C(5種C)、No. 6(6種)という対応になっています (カッコ内がJIS P3801に規定されたろ紙種別)。 No. 7 はかつて「無灰ろ紙」と呼ばれ、灰分の非常に少ないものです。 区分の欄の表示は以前のカタログにあったものを、分かりやすいのでそのまま残してあります。 紙の強度(乾燥時と湿潤時)の規定は省略しました(No. 131 の破裂強さに疑問)。
なお沈殿粒子径についてですが、以前は「沈殿保持性」として粗大、中、微細などという表記になっていました。 JIS P3801 では、水酸化鉄、硫酸鉛、硫酸バリウムが、それぞれの代表として登場し、 「沈殿のろ液が透明となること」という規定になっています。 こうした ”体感的” な規定は廃れていくんでしょうが、老人は何か寂しい気がしてしまうんですよね・・・