2022.10
吉村洋介
化学実験 資料編

種々の物質・材料の熱容量

物質の熱容量については、古くから実験的、理論的に研究され、 単体の固体のモル比熱が 3R になるというデュロン-プティの法則、 単原子分子の気体の定圧モル比熱が (5/2) R になることなどはよく知られています (R は気体定数)。 けれどもそうした理論的な扱いから外れた物質や材料の熱容量については、 意外に知られていないようです。 なお水熱量計などで重要になる、水の比熱の温度変化についても載せておきます。

1.種々の物質・材料の定圧比熱

さまざまな物質・材料の定圧比熱(単位質量当たりの熱容量)cp の値をまとめておきます。 特記する以外、常圧 25 °C における熱容量です (主として理科年表、CRC Handbook of Physics and Chemistry によります)。

なお固体の場合には、定圧比熱 cp と定積比熱 cv の差は小さく、無視できる程度ですが、 一般に、気体・液体の場合には、その差は無視できません。 たとえばヘキサンの場合、定積比熱は定圧比熱より、0.54 J g-1 K-1 小さくなります。

表 1.種々の物質・材料の定圧熱容量(特記する以外、常圧 25 °C のもの)
物質cp/J g-1 K-1物質cp/J g-1 K-1
アルゴン(気体)0.520アセトン2.17
塩素(気体)0.479エタノール2.44
酸素(気体)0.918酢酸エチル1.94
窒素(気体)1.040ヘキサン2.27
空気(気体)1.007メタノール2.53
アルミニウム0.897硫酸1.42
0.3854.182
0.129海水4.0
0.449氷(0 °C)2.1
水銀0.140一般コンクリート~0.8
0.235花コウ岩0.80 - 0.84
黄銅~0.39ガラス~ 0.7
ハンダ~0.18シリカ0.74
ステンレス(18-8)~0.52~ 0.8
グラファイト0.709ポリエチレン~ 1.8
ダイアモンド0.509ポリスチレン~ 1.34
ケイ素0.712木材~ 1.3
食塩0.861.2 - 1.3

2.液体の水の定圧比熱の温度依存性

水の比熱はエネルギーの単位、カロリー cal とも関わって、 熱化学において重要な位置を占めてきました。 表 2 には気液共存状態における、 液体の水の定圧比熱の温度依存性を示します。 水の定圧比熱は 0 °C から温度を上げていくと、 最初減少し、35 °C 付近から増加に転じます。 水の定圧比熱は 20 °C から 70 °C ぐらいまで、 ほぼ一定ですが、水熱量計などでの室温以下の水の定圧比熱の扱いには、 (1 %程度ですが)慎重になる必要があります。

表 2.液体の水の定圧比熱の温度依存性(飽和線上)
温度/°Ccp/J g-1 K-1温度/°Ccp/J g-1 K-1
0.014.220 504.182
104.196 604.185
204.184 704.190
254.182 804.197
304.180 904.205
404.180 1004.216
CRC Handbook of Physics and Chemistry 2012 による

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