2022.10
吉村洋介
化学実験 資料編

種々の塩類の水への溶解度

学生実験で出会うような無機塩類の、水への溶解度の温度依存性をまとめておきます (炭酸カルシウムなど難溶性塩類については、溶解度積を参照ください)。 常圧での飽和濃度を、無水物の質量百分率(mass%)で示してあります。 「無水物」をどのように取るかは、場合によっては厄介な問題ですが (たとえば亜硫酸水素ナトリウム NaHSO3 をとるか、 二亜硫酸ナトリウム Na2S2O5 をとるか)、 ここでは表の左端の欄の組成のものを無水物として扱っています (データは CRC Handbook of Physics and Chemistry 2012 によります)。

固体の溶解度の温度依存性は、固体の相転移、 特に水和結晶の生成が関わって、しばしば複雑な様相を呈します。 たとえば炭酸ナトリウムは温度を上げていくと、十水塩から 32 °C で七水塩、35 °C で一水塩へと、 結晶水を失っていき、溶解度は35 °C 以上では温度とともに減少するようになります。 また実験的には過冷却現象等が起き、この表の数字通りにならない場合もあります。 ここではそうした詳細には触れていませんが、 必要があれば IUPAC-NIST の溶解度データベースなどを参照するのが良いでしょう。

表 1.種々の塩類の水への溶解度(無水物の mass%)
温度/°C020406080100
AgNO355.967.876.181.785.487.8
CaCl236.742.1352.8556.7358.2159.94
CaSO40.1740.2020.210.2010.1840.163
CuSO412.416.722.228.836.343.5
FeSO413.520.828.835.530.424
H3BO32.614.778.112.919.327.3
K2CO351.352.3545658.461
K2Cr2O74.310.920.831.741.548.9
K2SO47.119.9512.915.517.719.3
K3Fe(CN)623.931.137.241.74547
K4Fe(CN)612.52229.235.540.643.1
KBr3539.443.246.248.850.8
KCl21.7425.3928.5931.433.8636.05
KClO33.036.7412.0618.7826.8836.65
KH2PO411.7418.2525.2832.7640.9650.12
KI56.059.061.663.865.767.4
KIO34.537.5711.0915.2919.5824.03
KMnO42.745.9611.1118.16
KNO312.024.238.652.263.070.8
KOH48.753.257.959.561.864.6
MgSO418.225.130.935.635.933.3
MnCl238.742.547.054.155.256.1
MnSO434.638.637.734.630.826.7
(NH4)2SO441.342.944.746.648.550.5
NH4Cl22.9227.2731.4635.4939.443.24
Na2B4O71.232.56.0214.919.928
Na2CO36.4417.932.831.731.130.9
Na2S2O333.140.652.065.769.471.0
Na2S2O539.541.844.246.849.5
Na2SO31220.927.324.822.821.5
Na2SO44.316.1332.3530.930.0229.67
NaCl26.2826.4126.6727.0327.5028.05
NaHCO36.488.7311.1313.716.3719.1
NaNO342.246.65155.359.663.8
NaOH304658677479
NiSO421.427.432.035.839.944.8
ZnCl271.679.081.883.084.486.0
ZnSO429.135.041.342.139.937.6

以前は「これだけの塩を溶かすのに、水は何 g 必要か」という点に注目し、 溶解度は水 100 g あたりに溶ける塩の重さ、 ”g/100 g-水” が溶解度の単位として用いられてきました (現在も小中学校では採用されているようです)。 x g/100 g-水 は、100 x/(100 + x) mass% であり、 y mass% は、100 y/(100 - y) g/100 g-水 です。 電卓もない時代にはこうした換算が厄介だったのですが、 今日では質量百分率を用いるのが普通になっています。


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