水蒸気圧と定湿溶液

水の蒸発・凝縮、あるいは結晶の風解や潮解などとも関わって、 水蒸気圧の知見は重要です。 ここでは飽和水蒸気圧、定湿溶液について、 まとめておきます。

１．水蒸気圧

種々の温度における水の飽和水蒸気圧 P₀ を表 1 に示します。 今も mmHg (= Torr) 単位での扱いが残っているので、Torr 単位の数値も載せてあります。 1 atm = 760 Torr = 101.325 kPa。

Wagner らの与えている経験式による計算値です。 100 °C で精確に 1 atm（= 101.325 kPa）にならないのは、 ITS-90 を採用していることによります。

２．定湿溶液

水溶性の塩とその溶液が共存状態にあれば（飽和状態にあれば）、 それと平衡にある気相の相対湿度 RH （溶液の水蒸気圧 P_s と、同温の純水の水蒸気圧 P₀ の比 P_s/P₀） は熱力学温度 T が定まれば一定の値を取ります。 このような溶液を定湿溶液 constant humidity solution と呼び、 材料試験等の湿度の調整（JIS C2142）や湿度計などの較正（JIS B7920）にも利用されます （飽和塩法と称されます。湿度の調節にはグリセリン水溶液や硫酸を利用する方法もよく知られています）。

定湿溶液の相対湿度 RH の温度依存性は、 おおむね RH / % = A exp(B /T ) という式で表されます。 （A, Bは定数。±2%程度の精度）。 たいていの場合 B > 0 で、温度を上げると定湿溶液の相対湿度は低下します。 表 2 には、実験室的に容易に使用できる塩についての値を示します （CRC Handbook of Physics and Chemistry 2012からの孫引きです）。