2004.5.7.
「合金の分析」ノート  吉村洋介

試料の溶解と試料溶液の調製

金属の洋白を溶解させて試料溶液を作る操作は、以前から当化学教室で用いられてきた手順を踏襲しました。 洋白を硝酸に溶解し、硫酸を加えて窒素酸化物を追い出し金属塩類を硫酸塩に変えて、試料溶液を調製します。

手順は次のとおりです:

(2)の濃縮操作について、以前は「蒸発乾固」させるまでやることになっていました。 この濃縮操作は亜硝酸などが残っていると後の操作、特に銅のヨウ素滴定に悪影響を及ぼすためです。 しかし「蒸発乾固」までにするにはホットプレートの温度を160℃程度以上に上げる必要があり、突沸がおきて試料を失う危険が増します。 さらに長時間加熱していると、何らかの無水塩(硫酸ニッケル??)と思われるものが生成し、後の処理が厄介になります。 そこで現在は温度と時間を指定するようにし、「濃縮」という表現に止めてあります。

(3)で可溶性塩を溶解させた際、白色の不溶物が生成している場合があります。 洋白に鉛が含まれている場合、希釈して溶液を作った段階で硫酸鉛の白色沈殿が生じることになるわけですが、不溶物をただちに硫酸鉛と即断して、ろ過したりしてはいけません。 上にでも触れたように、長時間、蒸発・濃縮処理を続けると何らかの無水塩と思われるものが生成していることがありうるからです。 沈殿が生じた場合には、その日の実験終了間際であれば、次の日まで放置しておくように指示することにしています。 まだ実験時間がたくさんある時は、水で希釈した状態で煮沸しない程度にしばらく加熱してもらいます。 すると沈殿はたいていの場合溶解してしまいます。


「合金の分析」ノートに帰る