金属の洋白を溶解させて試料溶液を作る操作は、以前から当化学教室で用いられてきた手順を踏襲しました。 洋白を硝酸に溶解し、硫酸を加えて窒素酸化物を追い出し金属塩類を硫酸塩に変えて、試料溶液を調製します。
手順は次のとおりです:
(2)完全に溶けたことを確認後、9 mol/L硫酸 2 mLを加え、120-130℃程度で2時間程度熱して濃縮する(ホットプレートを利用する)。 時計皿をビーカーの上にのせ、突沸したときに試料が外に飛ばないように注意する。蒸発を促進させるために、時計皿で完全にふたをしない様に、ガラス棒を利用して工夫をすると良い。
(3)イオン交換水を50 mL程度加えて可溶性塩を溶解させ、メスフラスコを用いて全量を100 mLにする。以下の操作はこの試料溶液について行なう。
(4)(1)から(3)の操作をもう一度繰り返し、試料溶液を2種類調製する。
(2)の濃縮操作について、以前は「蒸発乾固」させるまでやることになっていました。 この濃縮操作は亜硝酸などが残っていると後の操作、特に銅のヨウ素滴定に悪影響を及ぼすためです。 しかし「蒸発乾固」までにするにはホットプレートの温度を160℃程度以上に上げる必要があり、突沸がおきて試料を失う危険が増します。 さらに長時間加熱していると、何らかの無水塩(硫酸ニッケル??)と思われるものが生成し、後の処理が厄介になります。 そこで現在は温度と時間を指定するようにし、「濃縮」という表現に止めてあります。
(3)で可溶性塩を溶解させた際、白色の不溶物が生成している場合があります。 洋白に鉛が含まれている場合、希釈して溶液を作った段階で硫酸鉛の白色沈殿が生じることになるわけですが、不溶物をただちに硫酸鉛と即断して、ろ過したりしてはいけません。 上にでも触れたように、長時間、蒸発・濃縮処理を続けると何らかの無水塩と思われるものが生成していることがありうるからです。 沈殿が生じた場合には、その日の実験終了間際であれば、次の日まで放置しておくように指示することにしています。 まだ実験時間がたくさんある時は、水で希釈した状態で煮沸しない程度にしばらく加熱してもらいます。 すると沈殿はたいていの場合溶解してしまいます。