<概要>
数を数えること、計数は、もっとも初歩的な測定操作ともいえよう。
しかし数が100を超えるようになると、取り扱いは厄介になってくる。
ここでは先にも扱ったPEペレット(1個の重さの平均が約15 mg)について、何個かの重さをはかることで、
ある程度の精度(おおむね1 %)で数百個のPEペレットの計数を行う課題と取り組む(こうした機能は電子天秤であれば通常、「個数計測機能」として備わっているが、今回は使用しない)。
同時に画像解析の手法を用いて、正確な計数を行うとともに、粒子の幾何学的な形状の評価の一端にも触れる。
<操作>
図2-1 PEペレットの画像例。ここには331個のPEペレットが写っている。
- 用意されているPEペレットを約5 g程度とり、感量が1 mgの天秤で1 mgまで重さを精確にはかる。
- 黒い紙の上にPEペレットをなるべく重ならないように並べスマートフォン等で写真を撮る(縮尺を得るため、定規を一緒に撮る)。
- 写真をPCに取り込み、指示に従ってImageJ*1 で画像処理して2値データ(白黒写真)にした後、
粒子解析機能を用いて粒子数、平均粒子径(ここではFeret径(定方向接線径)を採用)を求める。
- PEペレット5粒ずつ取って感量が1 mgの天秤を用いて5回程度重さをはかり
(計25個の重さをはかる。1回ごとに風袋操作(tare)を行わない)粒子数を算出する。
*1 ImageJは米国の国立衛生研究所(National Institute of Health。NIH)で開発されている画像解析アプリケーションで、
https://imagej.nih.gov/ij/download.htmlからダウンロードできる。
医学・生物学分野を中心に多くの分野で利用され、ImageJから派生したもので著名なものに Fiji や Icy、天文学分野のAstroImageJがある。
<検討>
- PEペレット1個の重さの標準偏差 σ を1.7 mgであるとする。
粒子数を2 %程度の精度で推定するには、PEペレットを何個程度取って平均を求める必要があるだろうか(有意水準を5 %程度にとる)?
天秤の秤量の標準偏差を 1 mgであるとする(N個の標本平均に対する天秤に起因するばらつきは1 mg/Nと見なす)。
- 先に求めたPEペレットの真密度を用いてPEペレット1個の平均体積 v を求めよ。
また画像解析から求めた平均粒子径 d を用いてPEペレットの体積形状因子 volume shape factor φv = v/d3 を求めよ。
<検討課題>
- 5粒ずつ5回程度の秤量から求めた重さのばらつきから、
推定した粒子数の不確かさを推定してみよ(t-分布を用い、標本平均のばらつきを、有意水準を5 %程度にとって検討すればよい)。
- 駒込ピペットに2 mL程度の水を取り、滴下した水の総量が1.50 gに達するまで、
一滴ずつビーカーに滴下して滴数を数える(感量0.01 gの天秤で重さをチェックする)。
この操作を3~5回程度行い、一滴が何mL程度であり、滴数がどの程度ばらつくかを調べてみよ。
- 平均粒子径については、さまざまな定義が存在する。
投影円相当径(Heywood径)は粒子の投影面積(画像解析で求めた面積)Aに相当する円の直径(4A/π)1/2の平均であり、
等周長円相当径は粒子の投影図形の周長 L に相当する円の直径 L/πの平均になる。
実際にこれを求めて、どの程度 Feret 径と異なるか調べてみよ。
- 粒状物質、粉体を均一に混合することは一般に困難で、
特に異なる性状を持つもの同士の場合にはかき混ぜることで返って分離が起きることがある(偏析 segregation)。
カラムクロマトグラフィーに用いられるシリカゲルで、粒径の異なるもの(100メッシュ*1 と200メッシュのもの)について、
色素を吸着させて色付けたものを用意してあるので、
200メッシュの色付けしていないシリカゲルを1 g程度試験管に取り、
色付けたシリカゲルを0.2 g程度加えて振り混ぜ、混合の様子を調べてみよ。
*1
メッシュは元来、ふるい(篩)について言われるもので、1 inch(= 25.4 mm)あたり何本の目数があるかを示す。
ふるいに用いる線の太さをd mmとすると、Mメッシュの場合(25.4/M - d) mmの目開きがあることになり、
100メッシュでは0.1 mm程度の線が用いられるのでおよそ150 µm以上の粒径のもの、
200メッシュでは0.05 mm程度の線が用いられるのでおよそ80 µm以上の粒径のものということになる。