温度 Te の環境の中におかれた物体の温度TXは、熱伝導によって時間がたつにつれTeになる。 この時の温度の時間変化は、多くの場合、物体と環境との温度差TX - Te に比例するとみなすことができる(ニュートンの冷却の法則):
\begin{equation} \frac{\rmd T_{\rm{X}}}{\rmd t} = -k(T_{\rm{X}} - T_{\rm{e}}) \label{eq:newton} \end{equation}
比例係数 k を放熱定数、1/k を放熱の緩和時間と呼ぶ。積分形では式 \eqref{eq:newton} は次式のように表すことができる:
\begin{equation} T_{\rm{X}} - T_{\rm{e}} = (T^\circ_{\rm{X}} - T_{\rm{e}}) \exp(-kt) \label{eq:newtonint} \end{equation}
あるいは対数を取って
\begin{equation} \ln |T_{\rm{X}} - T_{\rm{e}}| = -kt + C \label{eq:newtonln} \end{equation}
ここで T°Xは時間0における物体の温度を示し、C = ln |T°X - Te|である。 環境との温度差は時間 0.693/k(= (ln 2)/k)たつと半分になる(半減期)。 また温度 Te(1) と Te(2) の2つ環境に接している場合には、 物体が定常状態で到達する温度TX∞は
\begin{equation} \frac{\rmd T_{\rm{X}}}{\rmd t} = -k^{(1)} (T^{\infty}_{\rm{X}} - T^{(1)}_{\rm{e}}) - k^{(2)} (T^{\infty}_{\rm{X}} - T^{(2)}_{\rm{e}}) = 0 \label{eq:newton2} \end{equation}
より次式で評価できる:
\begin{equation} T^{\infty}_{\rm{X}} = \frac{k^{(1)} T^{(1)}_{\rm{e}}) + k^{(2)} T^{(2)}_{\rm{e}}}{k^{(1)} + k^{(2)}} \label{eq:newton2x} \end{equation}
実験に先立ってPCにKeysight Handheld Meter Loggerをインストールしておくこと*1。
*1 Keysight のサイト https://www.keysight.com/ からダウンロードできる。 なお提供されているのは Windows 版のみである。
ビーカーに水を50 mL入れ温度変化を測定した例を図2-2に示す。 ホットプレートスターラーの天板とビーカーの間に水を張った場合の最終到達温度は79 °C、水を張らない場合は70 °Cであった。 ともに温度の時間変化は式 \eqref{eq:newtonln} に従うものとして解析でき、えられた緩和時間 1/k はそれぞれ 340 s、790 sであった。