2020.5
吉村洋介
4. 無機化合物の合成と分析

4-1 鉄(III)塩溶液の調製

<概要>

硫酸鉄(II)七水和物(緑礬(リョクバン)とも呼ばれる。土壌改良・排水処理・顔料等に使用される)を過酸化水素で酸化して鉄(III)塩の溶液を調製する。

<試薬>

  1. 硫酸鉄(II)七水和物(FeSO4·7H2O、式量278.01)
  2. 9 mol/L 硫酸:
    資料編V-10を参照して硫酸(96%)を希釈する。30 mL程度調製すればよい。発熱注意!余った9 mol/L硫酸は後の操作でも使用するので取っておく。
  3. 過炭酸ナトリウム(Na2CO3·(3/2)H2O2、有効酸素量11 %)*1

*1 いわゆる酸素系漂白剤の主剤。今回用いるのは一般に市販されている、無水炭酸ナトリウムを含む有効酸素濃度11%のものである(過酸化水素の含有量23 wt%)。なお慣用的に過炭酸ナトリウムと呼ばれているが、実際には炭酸ナトリウムと過酸化水素の付加体である。

<操作>

  1. 100 mLのビーカーに過炭酸ナトリウム6 gをとり水20 mLを加えて混和する (少し酸素の発泡が起きる。完全には溶解しない)。
  2. (1)の過炭酸ナトリウム混液に9 mol/L硫酸6 mL を滴下して中和する(二酸化炭素が発生して発泡する。後半になると発泡が激しくなるので注意)。 ここにさらに9 mol/L硫酸を4 mL加えて過酸化水素溶液を調製する。
  3. 200 mLのビーカーに硫酸鉄(II)七水和物14 gを取り、水40 mLを加えてかき混ぜる。
  4. (3)の硫酸鉄(II)溶液に、かき混ぜながら(2)の過酸化水素溶液をゆっくり加えてしばらく放置した後、濁っている場合にはろ過する。 以下これを原料鉄溶液と呼ぶ。


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